「なんだかんだで……。」
大谷不動(不動裏左・右) アイスクライミング
2005年1月29日(土)〜30日(日)
メンバー:朝岡、佐野、笠井、鳥居(YCC)、神谷(記)
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<不動裏F2右の氷瀑>
昨年と同じくこの大谷不動が、今シーズン初アイスとなった。 最初は八ヶ岳に行って、そのあと少し難しいところで練習して、そして大谷不動、というスケジュールを考えていたのだが、結局計画はしたものの登ることができず、いきなり大谷に来てしまった。 ※以下、登り出すまでが長いので注意。ルート情報は、一気に下まで飛んでください。 1月29日(土) 峰の原高原スキー場のトイレ上の更衣室で仮眠を取る。暖房が効いていて快適。が、早朝からスキー客がやってくるので、ほとんど寝られないまま、その場を撤収。7時ごろにその部屋を出る。我々はどっちにしろリフトが動く8時半まで行動できないため、寒くても駐車場にテントを張ってゆっくり寝ていたほうが良かったかも、と思ってしまう。 食事をしつつ、今日の行動について考える。 今回は、車が二台あるので、下に一台置いて、行きも帰りも下りにしよう、とか、夕食のキムチ鍋用食材が大量にあり、そりを使って運ぶので、リフトを使わず車で須坂青年の家まで運んでしまおう、とか、いろいろと作戦を練っていた。 そんな中、一人スノーシューで来ていたメンバーが、先週大谷のテントサイト付近で落とした財布を捜すために、先に出発していった。 ほかのメンバーはみんなスキーだし、財布を探している間に到着するだろうし、とくに問題はないだろう、と思っていた。 しかし、それがすべての歯車を狂わせることになるとは、この時点ではだれも気付かなかった。 食事も終わり、そろそろ8時になるので、パッキングをして動き始めるか、というときだった。 二台ある車のうちの一台のキーがないことに気付いた。 先行したメンバーが、キーを持って行ってしまったのだ。 これで、一台を下に置いておく、という計画は崩れた。 でも、キーがなくても車のロックはできるし、それほど問題はない、はずだった。 しかし、車のキーには、ルーフに付いているスキー板を外すキーもくっついていたのだ。 あぁ。 スキーがないのは致命的。 何もできない。 仕方がないので、作戦を練り直す。 ともかく、ここままでは身動きがとれない。 キーのある方の車の精鋭メンバーが空身でスキーを走らせ、一気にスノーシューに追いつく。 キーを受け取り、そのまま林道を下り、下で待機させた車でピックアップ。 さらに、スキー場に戻り、今度は二台の車で、もう一度林道下へ向かい、一台を残置。 一台は、またスキー場へ。 …………。 なんとも面倒で手間がかかる。 これでは、現地に着いて登れるのは、何時になることか。 でも、スキーが使えない以上、これ以外に方法はない。 (結局、林道下は除雪がされておらず、通常入れるところのずっと手前の民家付近までしか車が行けなかったので、下に車を置く、というのはやめた。) まず、スキーの上手な二人が空身で出発した。 私のスキーは使える状態にあるのだが、スキー技術を考えると、足手まといになるだけなので、先行部隊には入らない。さりとて、ここでじっと待っていてもやることもないので、荷物を持って、ゆっくりスタート。 残る二人は、ころあいを見て、林道下へ車で移動する。 リフトに乗り、林道に出て、アプローチ開始。先行する二人はとっくに見えない。 大谷不動は、これで三回目。いつもアプローチのスキーで往生させられる。 まず、リフトの降り口で転んで、ゲレンデで転んで、林道に入ってからも曲がり角のたびに数え切れないほど転ぶ……。 今回も、どれほど転んでテントサイトにたどり着けるのだろうか、と思っていた。 しかし、今回はほとんど転ばなかったのだ! それは、スキーが上達したから、ではなく、単に雪の状態が悪くて、スキーのくせに板にダンゴが付いてしまい、全然滑ってくれなかったから。下り坂なのに、ほとんど滑らず、歩きながら進んでいた。スピードが出なければ、転ぶこともない。でも、その分疲れる。これなら、スノーシューと同じなのでは、と思わなくもない。常にシールをつけているような状態だ。 転びながらも滑って行くのと、転ばないけど滑らずにひたすら歩いていくのと、一体どっちが早いのだろうか。 大谷不動に毎年通っている人も、こんな湿った雪の状態は初めてだ、と言っていた。 転ばずにすんだのはありがたいことではあるが。 ともかく、2時間ほどでテントサイトに到着。 スノーシューで先行していたメンバーと合流。財布はまだ見つかっていないらしい。 ほかのメンバーが来るまでには、あと2時間くらいはかかるだろう。待っていても仕方がないので、先に登りに行くことにする。 大谷不動には、ほかに3パーティが入っていた。 不動裏の氷瀑 不動裏は3年前、初めて大谷不動に来たときに一度登っている。 幸い、不動裏にはどのパーティも来ていない。軽くラッセルしながら登っていく。先週末からほとんど雪が降っていないのか、先週のものと思われるとレースもうっすら残っていた。<★不動裏F1へ> F1下でアイゼンなどをつけるが、F1自体はロープなしで越える。 上部で、氷が薄いところがあり、穴ぼこが開いていて、はまりそうになった。 F2までは少しラッセルがきつくひざくらいある。まず左の氷瀑へ向かう。<★F2全景> 登攀準備をしていると、スノーシャワーが頻繁に降ってきた。雪と一緒に木の枝や砂なんかも落ちてくる。今日は気温が高いし、時間的にも遅いのかも、と思う。 不動裏の氷瀑F2(左) シーズンはじめの最初のアイスで、いきなりV級に取り付くのは無謀と思えたので、まずはフォローで様子と調子を見る。 ツララの裏側でビレイを取り、少しずつトップが登っていく様子を眺める。 ビレイするロープを握ってはじめて気付いた。そうか、これが、明星山の事故以来はじめてのビレイなんだ。 ロープの感触が、あのときのことを否が応でも思い出させ、むやみに緊張してしまう。 トップが落ちたらどうしよう、止められるか、引きずられるか、そんなことを考えてしまう。 トップは、途中テンションをかけながらも危なげなく登っていった。 ビレイしているのが物凄く長い時間に感じられ、手には汗がびっしょりとかいていた。 さて、早速フォローで続く。 久しぶりのアイスの感覚が、何だかうれしい。 思ったより水っぽい氷を少しずつ少しずつ登っていくが、垂直部分の真ん中あたりで、バイルのピックがスコンと抜けて、あえなくフォール。ほとんど地面まで落っこちかけた。リードじゃなくて良かった……。 気を取り直してもう一度登りなおし。あっという間にパンプしかかるものの、垂直部分は短いので、そこを抜けてしまえば、あとは、傾斜がゆるくなって、ほとんどIII級程度。 その後、遅れてくるはずの四人のためにトップロープを張ろうとしたが、支点を取るのにうまくいかず、結局やめた。 15時近くなり、こちらが下降しはじめた頃、四人はF1に到着した。 遅くなったけど、せっかく来たので、時間を見て登ってみる、ということなので、彼らと入れ替わり、我々はテントに戻り、焚き火と食事の準備をする。 テントに戻りつつ、ほかの氷瀑の様子を見に行った。バッチリ、とは言えないが、十分登れる程度には凍っている。<★左岩壁左><★左岩壁中央> 彼らは18時頃、暗くなってから戻ってきた。 その日の夜から雪となる。 1月30日(日) 7時頃起きると、一晩降った雪で、トレースは全く消えていた。雪は止んでいるが、ラッセルが大変そう。 アプローチももちろんだが、帰りの林道もラッセルでは時間がかかるのではないかと思われた。 登るのか、やめてこのまま下山するのか、考えているうちに8時を過ぎてしまった。 その後もウダウダして、食事を終えテントを出たのは、10時を過ぎてからだった。あまりにも遅い出発。だったら、7時に起きて、準備すればよかった……。 下山にかかる時間を考えて、早めにあがるために、今日も不動裏に行くことにした。 不動裏へは、ひざから腰くらいのラッセル。昨日のトレースは全くない。<★昨日とは一変してラッセル> 不動裏の氷瀑F2(右) 昨日、左を登ったので、今日は右。昨日フォールしていることもあり、リードはやめておいた。 60mロープでトップロープとして、3人が登った。 見た目は垂直だが、よく見ると足を置くところがちゃんとあって、バランスは取れる。しかし、左よりも垂直部分は長いので、腕の疲労は激しい。垂直部分を抜けて、傾斜が多少緩くなっているところは、氷質が少し悪かった。叩くとボロボロと崩れてくる。とはいえ、引っ掛けで登るとすっぽ抜けそうで怖い。傾斜は緩いが慎重に登って、何とか落ち口へ。 トップロープだから気楽に登れた感じだ。<★F2右をリード> 取付が遅かったこともあり、あっという間に時間が来てしまった。 左を登っているメンバーも撤収して、さっさと下山。<★F2左をリード> ラッセルも覚悟して、帰りは4時間を見ていたのだが、意外にあっさり2時間かからずにスキー場に到着。 スノーシューなら夏道が早いらしい。途中の分岐で山道に入って、林道よりは急な傾斜をひたすら登ると1時間半程度でスキー場に着いたとか。夏道はスキーだと逆に大変。行き帰りもスノーシューでその道を使うなら、下手なスキーで苦労しなくてもいいかもしれない。 |
1月29日(土) 晴れ 夜から雪
9:00 峰の原高原スキー場駐車場発 リフト(300円)
9:30 林道入口
11:45 テントサイト着
不動裏(左)登攀
1月30日(日) 曇り
10:10 テントサイト発
11:00 不動裏F2(-6℃)
13:15 登攀終了
14:15 テントサイト発(2℃)
16:05 峰の原高原スキー場(11℃)
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