「氷瀑の巣」
大谷不動周辺 アイスクライミング

2002年2月9日(土)〜11日(月)
メンバー:榎本、石原(YCC)、神谷(記)
報告内の<★>マークは、写真へのリンクです。


右側壁の氷瀑
<右側壁の氷瀑>

2月9日(土)
 アプローチは新調したフリートレックで。
 峰の原高原スキー場に車を置いて、リフトに乗る。
 リフトの出口でいきなり転んで、先が思いやられる。
 何せ、スキーは約5年前に1-2回やった程度。その先は、さらに10年以上前にさかのぼるので、ほとんど初心者だ。
 大谷不動といえば、V級以上の氷しかないというハードエリアだが、氷の難しさ以上にアプローチに不安を感じての出発だった。
 新しい板は、滑りが良すぎて、背中の荷物とのバランスがうまくとれず、何度も転ぶ。ブレーキのかけ方がよく分からないので、とりあえず止まりたいときは転ぶしかない。こんなんじゃ、歩いたほうが早いのでは、とちらっと考える。
 しかし、途中分岐を越え、道が登りになって、シールをつけてからは、超快適。山スキーの真骨頂。シールってなんて素晴らしいのだろう。まるで板が雪面に吸い付くようだ。アスファルトの林道を歩いているような、フラットソールでスラブを登っているような、そんな感じ。ちょっと感動。目からウロコであった。

 林道の入り口から2時間で大谷不動BC着。
 小屋の軒下にテントを張り、さっそく、不動裏の氷瀑へ。
 F1はノーロープでさくっと越え、ロープを出して手間取っていた先行パーティを追い抜く。F2下部の取り付きまで50mほどラッセル。昨晩からずっと雪が降り続いており、しかもF2上部からのスノーシャワーがあるようで、新雪がずいぶん積もっていた。
 我々は左ルート、先行パーティは右ルートを選択。左の滝の裏側の空洞に入り込み、スクリューと氷柱でビレイをセット。

不動裏の氷瀑(左)(石原リード)
 下から見ると、ずいぶん立っている様に感じる。それでも、右ルートよりはだいぶまし。これくらい登れないと、大谷不動に来た意味がない。<★不動裏の氷瀑へ
 石原さんリードでスタート。ビレイ点からはリードの登っている様子が見えないが、ロープの流れを見る限り、じりじりと進んでいるようだ。途中、大量のスノーシャワーが降ってきて、ヒヤリとしたが、無事終了点に到着したようだ。<★じりじり進むリード
 続いてセカンドで登りだす。出だしから立っており、腕のかなりの負担がかかる。一歩一歩こつこつ決めていくが、うまく休めないので、疲労は徐々に蓄積される。ちょっとしたでっぱりがあり、足の置き場はあるものの、やはり腕がきつい。「フィフィで休もうかな」と甘える自分と「いやいやできればフリーで」と反抗する自分のせめぎあい。あと一手あと一手、と考えながら、何とかフリーでクリア。あと5m垂直部分が続いたら、フィフィテンションかけていたかもしれない。
 続々と後続パーティが登ってきており(全部で5パーティくらい)、いい時間にもなったので、今日はこの一本のみとして下る。

 左ルートは新雪が降るとすぐに雪崩れるようで、何度かスノーシャワーが降ってきた。登るタイミング、ビレイの場所など、注意が必要だと思った。

2月10日(日)
本流
一ノ滝(神谷リード)
 ガイドには、「ノーザイルで登れるだろう」と書いてあるが、氷の状態が悪いのか、とてもロープなしでは登りたくない。滝は右からも登れそうだったが、取り付くまでが怖い。岩のトラバースをするか、崩れそうなスノーブリッジに乗るか、ジャンプする(!)か…。滝の下は冷たそうな水だったので、あきらめて左からロープを出して登る。<★ロープなしでは難しそう
 しばらく先行2パーティの順番待ち。
 氷が薄く、すでに5人登っているので、穴だらけ。打ち込まなくても、そこに引っ掛けて登ればよい、というのは分かるものの、なかなかそれができない。引っ掛けた状態で、バイルの角度を変えずに身体を乗り上げる、頭で分かっているが、実際には難しい。どうしても微妙にバイルを動かしてしまい、穴から外れてドキッとする。
 傾斜はゆるいので、それ以外には問題なく、先へ進む。

二ノ滝(1P目神谷リード、2P目石原リード)
 大きな滝だが、下部はそれほど難しそうではない。上部は短いが、立っているように見える。<★二ノ滝登る先行パーティ
 下部をリードさせてもらう。傾斜はゆるく、バイルも刺さりも良い。余裕を持って、快適にフリーで進む。ただ、上部を先行パーティが登っており、その落氷、なだれが頻発。その度に行動を中断させられる。できれば、先行パーティが登りきってから取り付いたほうが安全だと思われる。
 上部左の貧弱な潅木でビレイ。
 真下まで来ると、上部も下から見ていたよりは傾斜がゆるく感じる。凹角状だし、スタンスもある。とは言え、一部かぶり気味のところもあり、一筋縄では行かない。ちょっと圧倒されるが、昨日の不動裏のほうがきつかったかな、と感じた。<★ちょっとかぶり気味?

三ノ滝(神谷リード)
 見るからに傾斜がゆるい。じゃんけんで勝って、リード。初心者の練習用に良いかな、という感じ。横幅があるので、どこからでも登れそう。バイルの刺さりも良く、快適。快適すぎて、スクリューセットを忘れそうになるので、意識して支点を取っていく。


右側壁の氷瀑(石原リード)
 それほどアイスの経験があるわけではないのだが、今までのすべてのアイスの中で一番厳しいと感じたのが、この氷瀑だった。登れば登るほど腕の力が落ちていく。腕が震える、足が震える。とにかくきつい。

 見た目はあまりきれいじゃない。土の混じった茶色い氷<★見た目は良くないが。右から登ればやさしそうだが、榎本さんからモノポイントアイゼンを借りた石原さんは、あえて左の垂直の氷柱を登りだす。順調に登っていくリードを見ていると、それほど難しくないのでは、という錯覚に落ちたりもする。しかし、上部に至って急に登攀スピードが落ち、やはり厳しいのだ、と思わせた。
 50mロープでは、ワンピッチで登ると上部支点まで届かない。今回はハーケンを打って、支点とした。いったん途中でスクリューでピッチを切ったほうがよさそうだ。<★出だしから厳しい

 さて、緊張の中フォローで登攀開始。
すでに、本流を登っているので、腕に疲れが残っていた、とそれは言い訳に過ぎないのだが……。
 出だしから、腕に力が入らない。5mほど登るだけで、腕が言うことを聞いてくれなくなる。さらに2m。3本目の支点で限界だった。このままじゃ、手を離してしまう、と思い、急いでフィフィを出してテンション。休みつつ回収。
 再び登りだすが、もう打ち込む力がない。ふにゃふにゃ。耐えている方の腕もつらいので、早く打ち込まなくちゃ、と思うほど焦ってますます刺さらない。次の支点回収でもフィフィテンション。

 ようやく、長い長い下部を終え、中間部に到達。傾斜が緩まるので、少し休める。しかし、見上げると、さらに上部氷瀑が続いている……。

 下部よりは多少緩傾斜な気もするが、疲れきった身体には、もうどちらでもおんなじだ、という気分。フォローだというのにフィフィなんて使っている場合か、と思うものの、結局支点回収の度にフィフィを取り出してしまう。いや、このままではフィフィどころじゃなく、本格的にロープにテンションをかけてしまいそうだ。

 やっぱり足が重要なのか。足の蹴りこみをうまく使って、腕の力をキープしなくてはならないのか。そう考えてみるが、足はちょっと動いただけでストンと外れることが多く、なかなか信用しきれない。

 しかし、こんなのでは、リードはまだまだ先の話のように思える。

 ようやく、ビレイ点までたどりついた時には、もうフラフラ。バイルを握る力もないくらいだった。
 ハーケンで作ったというビレイ点からさらに登り、左の木から懸垂下降。懸垂は50mロープで十分届いた。

 初の大谷不動は、なかなか刺激的だった。わざわざスキーを使ってアプローチをするだけの価値はある。石原さんの言葉によると、ここは「氷瀑の巣」とか。なるほど、見渡すと滝はそこかしこにある。<こんなのも登る人がいるとかいないとか
 確かに難しいルートが多いが、全く登れないわけじゃない、というのが分かって安心した。しかし、垂直の氷をリードするまでの力はない。さらにそれをフリーで、というのはまた先だ。
 次に来るのは来年だろうか、テントサイトも快適だし、何度も来たくなる場所ではある。そのときには、もっと登れるようにトレーニングを積んでおかなければならない。

2月11日(月)
 今日は下山のみ。やっぱりスキーは下りが苦手。滑りすぎる。シールをつけての登りは、腕が疲れるが、快適。ぐいぐい進める。




2月9日(土) 雪 -2℃〜-8℃(日中)
23:00 巣鴨発
3:30 峰の原高原スキー場駐車場
8:00 起床
9:30 リフト(300円)
10:00 林道入り口
10:45 分岐
12:00 大谷不動BC
12:50 BC発
13:00 不動裏の氷瀑F1
13:35 F2
15:00 終了
16:00 BC着


2月10日(日) 曇り一時雪のち晴れ -4〜-5℃(日中)
5:20 起床
7:05 BC発
7:20-8:40 本流一ノ滝
8:50-10:40 二ノ滝
11:30-12:20 三ノ滝
13:00 右側壁の氷瀑
15:00 終了
16:00 BC着


2月11日(月) 曇り(朝一時雪)のち晴れ  
5:00 起床
7:20 出発
9:20 スキー場(林道入り口)着
10:20 林道入り口発
10:30 駐車場着




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