今日で歩行は最終日。
体調はあいかわらず。多少はましか、という程度。
最後くらい気分よく歩きたいところだが、頭も身体もフラフラする。
朝から少し雲が多い。ここ数日は、朝快晴、午後曇りというパターンが続いていたのだが、また悪天の周期に入ったのか。単に標高が下がったからかもしれない。
緑の森の中を歩く。集落も多い。
途中、鼻をかむと、鼻血が出て止まらなくなってしまった。しばらくその場で休憩。
クワンデ峰が遠くに見える。ずいぶん小さくなってしまった。あの向こうにナムチェがある。カラ・パタールもゴーキョもずっと昔のことのように感じる。
再び、この道を歩くことはあるだろうか。
ルクラから意気揚々と登ってくる人たちとたくさんすれ違う。
行く人と戻る人。
彼らはこれからどんな経験をするのだろうか。
どんな思いを抱えて、この道を戻ってくるのだろうか。
まさにここは運命がすれ違う道だな、と思った。
今までも、これから登る、という人とはたくさんすれ違ってきた。でも、このあたりはみんな歩き始めたばかりだし、目が期待に満ちていて、服装もまだきれいなままだから、余計にそんなことを感じる。
ましてや、こちらは、体調が悪くてフラフラしているとなれば、そのギャップはあまりにも大きい。
朦朧とした頭でそんなことを考えながら歩いていると、最後のUPを登りきり、ルクラに着いていた。
ここはもう完全に街だ。ナムチェとは違うし、通り過ぎてきたほかの小さな村とも違う。子どもの姿が多いのは、今日が土曜日(休日)だからだろうか。
17日前、不安と期待に胸を膨らませて、真っ暗な店内で初めてのモモを食べたあの店に帰ってきた。カトマンドゥへのフライトは明日なので、今日はここで宿泊。
正直、食堂は暗いし、部屋は埃っぽいし、パクディンのロッジのほうが、ずっと快適だったけど、「ここはもうルクラ」というだけで、安心感があって落ち着く。
着いたときに、お茶と一緒に店頭に飾ってあったレモンパイを食べる。が、予想以上に甘すぎ。胃にもたれた。
昼過ぎ、食欲もなかったが、サンドイッチくらいなら食べられるか、とクラブサンドを頼む。しかし、これがとても脂っこくて、しかも量が多くて、またも胃にもたれた。
ルクラは、厳戒態勢で、18時30分以降は外出禁止だそうだ。警察から職務質問されることになるとか。
夜、最後の晩餐、と思ってビールを飲んだ。これが決定的に悪かった。やめておけばいいのに。
カレーとスープも頼んだが、ほとんど口に運べない。スープはあっさりしたものを期待して、卵スープを注文したが、ガーリック味で、においだけで、顔をそむけた。一口しか飲めなかった。カレーはおいしいのだが、おなかが受け付けない。
半分以上残して、部屋に戻る。食事を残したのは、これが始めてだ。
夜中、トイレと部屋を何度も往復した。3回吐いて、全部なくなった。
レモンパイの甘さ、クラブサンドの油、追い討ちをかけるようにビール。ビールは、関空からの飛行機で飲んで以来だった。どう考えてもビールは飲むべきじゃなかった。
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