朝から快晴、とはならなかった。降ってはいないが、雲が多い空の下出発。ディンボチェ〜チュクンへの道を村はずれまで行き、そこから山腹をトラバース。丘を越えると平原。一面雪で真っ白。トレースはしっかりと踏み固められているから良いが、何もなくて、ガスが出ていたら、リングワンデリングしてしまいそうな場所。
ためしに、トレースがないところを見てみると、30cmほどの積雪があった。ラッセルになったら、この靴で、スパッツなしでは、凍傷確実だろう。気休めに雨具下(ズボン)をつけて行動するが、あまり意味がない。すれ違う人やヤクをよけて、トレースをはずしているうちに、靴下から足先までびしょ濡れになってしまった。
平原の中の緩いアップダウンを繰り返す。身体がだるくて、とても重い。何だか視界がだんだん狭くなってきた感じさえする。頭痛はないが、苦しくて何度も立ち止まる。ちょうど4500m付近で、これもひとつの壁なのかもしれない。
トゥクラに向け、ゆっくり進んでいるうちに、雲の量がまた増えてきた。9時ころからはあられが降り出した。雪ではない。小さな塊がボツボツ降ってくる。雨具の上を着用。
そのうちに、陽が射してきた。太陽が見える。
頭上にはまだ雲があって、雪と変わったあられが降り続いている。
空を見上げると、まるで夏に照りつけるようにまぶしい太陽、そして夏によく見るかたちをした積雲。
夏の陽射しの中、雪が降る。幻想的な雰囲気。
10時30分トゥクラ到着。二つしかないロッジは人で一杯だった。疲れきっていたが、とりあえずミルクティ。続いて、シェルパシチュー。とても油ものを食べられる状態ではない。じっくりとシチューをすする。暖かいものが身体にしみこんでくると、体調も復活してきた気がする。食べ物をおいしく食べられるうちは、まだ大丈夫だと思える。
ここからロブジェまでのためにブラックティをテルモスに入れてもらう。
さらに、もう一杯のミルクティとホットチョコレート。
だいぶ落ち着いてきたので、再び歩き出す。
峠までの登り。4600mを超えたUPとなるので、きついことはきついが、朝ほどではない。雪はやんだ。暑くなってきて、Tシャツで歩く。
峠で休んでいると、また雪。雨具上を着なおす。
そこからはほとんど平坦な道。調子も良くなり、歩くペースも上がってきた。ほどなく、ロブジェ到着。<★ロブジェも雪の中>
ここは、団体客も多く、個室を一人で使うことはできないらしく、ドミトリーとなる。カラ・パタールに行く人は、必ずここで泊まることになるのだから、まあ仕方がないか。
食事も高い。夕食は16時30分までにオーダーしないとだめ、他の店で食べたら部屋代はRs600とか、何かと強気なロッジだ。
時折青空も見えるが、雲は多く、雪も降る。
明日はどうなるのだろうか。良かろうと、悪かろうと、ゴラクシェプまでは行くつもりだ。その後は天気次第。何も見えないカラ・パタールに登っても仕方がないが、ゴラクシェプまで行ってしまえば、カラ・パタールは目と鼻の先だ。
15時30分。晴れてきた。ヌプチェ、メラピーク(Mehra Peak・5820m)、ポカルデピーク(Pokalde・5806m)が見えてきた。ヌプチェの向こうがエヴェレストだが、それは見えない。
明日こそすっきり晴れてくれるのではないか、そう期待させてくれる夕暮れだった。
夜、ペリチェの診療所から人が来る。毎晩全てのロッジを回って、高度障害のチェックをしているらしい。同宿のドイツ人ふたりが調子が悪いとのことで、チェックを受けた。口頭での問診の後、パルスオキシメーターや聴診器を使う。また、立って足を前後に置き、腕を互い違いに肩にのせ、目を閉じてどれくらいそのままでいられるか、や、ライン上をまっすぐ歩けるか、のチェックもしている。
ただ、ここでやるのはチェックだけで、もし高度障害だということがはっきりしても、下ることを勧めるだけ。強制でもないし、治療もしない。
|