ネパール・トレッキング(クーンブ編)
10月25日(土)[雪のち曇り]
ディンボチェ(4410m)停滞

前日 翌日

6:00 起床 8℃ [脈拍60回/分]
7:00 朝食
12:00 昼食 10℃
19:00 夕食
20:30 就寝

 起きたときから雪。
 朝になったら止んでいるかもしれないという希望は、あっけなく崩れた。
 空は暗く、降り止む気配はない。
 気温が高いためか、歩道はドロドロ。雪が積もって締まる、という感じではない。
 同宿の日本人グループは、カラ・パタールの予定だったが、チュクン往復に変更したようだ。その他、多くのグループが行動を開始した。ほとんどはあきらめて下山していくようだ。しかし、こちらは全く動く気になれず、今日は停滞(ステイ)と決める。

 トレッキング前半はあれだけ天気が良かったのだが、悪天周期に入ってしまったのか。このあたりの天気の流れが分からないので、なんとも言えないが、22日マッチェルモでの巻雲は、この悪天を暗示していたのだろうか。
 まあ、日程的には余裕があるので、二三日ここで停滞していても、それほど問題はない。ただ、五日以上雪が続くようなことになるなら、それはまた別だ。あまり積もると、行くも戻るもできなくなってしまう。
 プラカスの話によると、去年も同じ時期に雪が降ったとか。そのときは、ナムチェにいて、降ったのは一日だけだったが、ひざ下のラッセルになったらしい。
 一日中、食堂と外と自室を行ったり来たりしていた。
 暇に任せて、宿帳をめくる。日本人も結構いるなあ、と思っていたら、見たことのある名前があった。「Shinji Mitsubori」。アコンカグアにともに登った友人の名だ。おそらく彼が1998年にアイランド・ピークに登りに来たときにこのロッジに泊まったのだろう。ディンボチェに数あるロッジの中から、同じロッジを選ぶとは、何という偶然だろう。
 午後になり、気温が上がると、湿り気のある雪になってきた。積もっている場所では10cmくらい。外を歩くと、服も靴もぐっしょり濡れる。
 この調子だと、明日もここでステイかもしれない。明後日はどうなる。その次は……。考えてもどうしようもないが、天気のことは頭から離れない。

 そして。
 17時。
 雪がやんだ!!
 自室の小さな窓から青空が見えた。急いで外に飛び出す。夕暮れのタウチェ<★夕方になって雲が切れる>
 空が、山が見える。雲が切れた。
 たくさんの人たちがもう外に出ていた。
 みんな笑顔で空を見上げている。
 現地の子どももうれしそうに空を見上げている。
 アマ・ダブラムが、アイランド・ピーク(Island Peak・6189m)が、ローツェが、タウツェ(Tawetse・6501m)が、だんだん見え始めた。
 そして、夕焼けだ!
 凄い。燃える山、燃える雲。燃える空。<★夕暮れ>
 全ては、このときのためにあったのではないか。今日の雪、今日のステイは、この素晴らしい世界のための舞台装置だったのではないか、そう思えるほどだ。
 この場所が、こんなに山に囲まれていただなんて知らなかった。
 こんなに世界が美しいだなんて知らなかった。
 今日の夕景のことは、このトレッキングの中でも、忘れられない想い出になるだろう。
 ロッジの人もみんな外に出て来て、この景色に圧倒されている。みんなの心はひとつ。
 「世界はなんて美しいのだろう!」


前日 ページのトップ 翌日



ネパール・トレッキング2003年秋 の表紙に戻る
トレッキング詳細へ
Libraryに戻る