韓国・仁寿峰(インスボン)報告 その2
ウィディキル & インスA
2002年7月1日(月)、2日(火)
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<青:インスA 赤:ウィディキル>
前日までは、こちらから 7月1日(月) 今日は月曜なのだが、韓国ではワールドカップの4強に残った記念で休日らしい。今日はちょっと雲が多い。にわか雨があるかもしれないが、昨日の暑さを考えると、陽射しがないだけでもありがたい。 また大スラブからオアシステラスへ向かう。フォローならともかく、リードは何度登っても怖い。やはり気持ちの問題か。<★大スラブへ向かう> 今日も2人ずつ2パーティに分かれるが、同ルートに進むので、先行パーティのリードがセットしたカムはそのまま残置し、後続のフォローが回収するという形をとった。連続してカムが必要なピッチは後続のフォローを待ってから進むことになるので、多少時間がかかった。 大スラブを登っていると、昨晩”夜登”をした金氏が登ってきた。早速シュイナードBを登るのだとか。夜中に帰ってきて、ほとんど寝ていないはずなのに、そのパワーは何なのだろうか。そういえば、山荘の主人の息子さんは、仁寿峰でかつて一日に6ルートを登ったそうである。キムチと焼肉を食べ続ける韓国人は、やはり何か違うのだろうか。恐るべしである。 <<ウィディキル(医大ルート)>>5ピッチ、150m、5.10d・A0(村野・神谷/大西・石川) オアシステラスの右端からスタート。顕著なスカイラインが鮮やかなルート。 1ピッチ目【村野リード】5.8 フレーク状クラックで支点を取りつつ、スラブへ移る。このスラブの一歩が怖い。「またか」という感じだが、どうもスラブは支点間隔が遠い。一歩進めばボルトがあるのだが、その一歩を間違えると、一気に降られて落ちる。もう少し手前にボルトがあれば、精神的にぜんぜん楽になるのだろうが。<★このクラックの先が問題> 2ピッチ目【神谷リード】5.9 純粋なクラック。アンダーで持ったり、レイバックしたり、ジャミング決めたり。出発前に湯川、小川山でクラック特訓をした成果が少しは出ただろうか。とは言え、途中で2回テンションをかけてしまったのだが。スラブよりはぜんぜんまし。楽しいピッチだった。<★さあジャミングだ!> 3ピッチ目【村野リード】5.10a・A0 5.10aまたはA0ではなくて、A0でしかも5.10aのピッチ。 ボルトにヌンチャクを掛ける、ヌンチャクを持って身体を持ち上げる、ボルトに足をのせる、ボルトに立ちこむ、さらに次のボルトにヌンチャクを掛ける……。の繰り返しで、5-6本のボルトを進む。 最後のボルトはやたらに遠くて、ボルトへの立ちこみが非常に厳しい。フォローのくせにチョンボ棒を使用して、ようやく届く。そしてその先のマントリングも非常にいやらしい。 支点が取れないので、リードは相当厳しいものだと思う。A0もやりようがないし、ボルトにスリングを掛けて足がかりにして、ようやく登れた。ザックを背負ってたから余計につらい。<★A0の連続> 4ピッチ目【神谷リード】5.7 全長20m。全く支点の取りようがないスラブ。下から見て一番顕著なスカイラインを登っていたのだろうが、周りを見る余裕はぜんぜんなし。立ち止まることもできないので、息を止めて必死で登る。大丈夫大丈夫と言い聞かせながら。頭の中真っ白。 この先、5ピッチ目の5.10dがあるのだが、それは昨日登っているので、今日は省略。耳岩の下から懸垂下降50m3ピッチでオアシステラスまで。 一旦山荘まで戻ると時間がかかるし、また大スラブを登り返さなくてはならないので、今日はオアシステラスからそのままインスAのルートを登る。 <<インス(仁寿)A>>4ピッチ、115m、5.8(村野・神谷/大西・石川) ウィディキルのすぐ左。ちょうど今懸垂で降りてきた凹角を登り返す。チムニー連続ルート。 1ピッチ目【村野リード】5.6 広いクラックだが、上部はチムニー状。キャメロット#3.5-4.0などの大き目のカムが良く決まる。やさしいので、大きいカムがなくても、何とかなるとは思う。上部は早めに外に出てステミングすると楽になる。<★ここからスタート。すぐ右がウィディキル> 2ピッチ目【神谷リード】5.8 苦しいチムニー。なるべく外に出よう外に出ようと考えるものの、フレアー気味の凹角なので、どうしても中に入りたくなってしまう。バックアンドフットになるので、ザックがあると非常に邪魔だ。昨日は全員ザックを持っていたが、今日は各パーティに一つずつにした。フォローが背負う事になるのだが、二人分の荷物なので、負担は大きい。 石川さんはうまく外に出ていて、楽に登ってきているので、登り方によるのだと思う。<★中に入ると苦しい> 3ピッチ目【村野リード】5.7 また長いチムニー。さすがにチムニーはもういいよ、と思う。大きめカムが大活躍。最後の岩を乗り越えるところが非常に苦しい。背負っていたザックをおろし、腰からぶら下げて登る。それでもたまらずA0が入る。<★バックアンドフットで> 4ピッチ目【神谷リード】5.6 大岩を越えるラストピッチ。右のほうから逃げられそうだったが、あえて正面突破。大岩正面のクラックはジャミングが決まらないので、左に身体を振って登る。終了点は、耳岩と本峰とのコル。<★仁寿峰ラストピッチ> 岩の味をかみ締めながら”タヌキの腹”を登って本峰へ。最後に記念撮影をして、懸垂下降に入る。 7月2日(火) 夜中にかなり強い雨が降ったが、朝には止んでいた。壁を見ると、スラブはもう乾いているようだ。 今日は11時にウィドンで崔さんと待ち合わせ。なんと街での買い物や空港までの案内もしてくれるという。韓国語はさっぱり分からない4人だったので、願ってもない申し出だったが、そこまでしてもらってよいのだろうかと、恐縮する。 逆算して、8時半に山荘を出ることにするが、朝食後時間があったので、白雲台(ペグンデイ)に一人で登ることにした。白雲台はハイキングコースなのだが、仁寿峰に登っていると、頂上を目指す大勢の人が見えて、何かとても楽しそうだった。頂上まで30分くらいだと聞いていたので、余裕だろうと思って出かける。 しかし、結局道が分からず、1時間迷い続けて敗退。案内板も何もないし、今日は平日で登山者がほとんどおらず、どっちに行けばいいのか全く分からなかった。まさか韓国でヤブこぎする目にあうとは。 トソンサまで、山荘の人がついてきてくれるという。まったく至れり尽くせりだ。お世話になった山荘に別れを告げ、8時半前に出発。40分ほどでトソンサ到着。 トソンサまでは車が入るのだが、バスの終点であるウィドンまでは歩くことにする。トソンサからウィドンまでも結構急な坂道。行きはタクシーだったのでなんとも思わなかったが、歩くときつい。 ウィドンの風呂は4,000W。男湯にはタオルと石鹸があるが、女湯には何もないらしい。とてもきれいで新しくて大きい風呂だった。<★これが風呂> 風呂から出ると崔さんが来ていた。東大門まで移動して、”スーンヒーアウトドアショップ”で買い物。ここは、安村さんがヤマケイで紹介していたお店だ。ファイブテンの靴は日本の7割くらい。ニュートンを108,000w、モカシムを60,000wで買う。モカシムは売れ残りらしくだいぶ安くしてもらった。そのほかのカムやウェアはそれほど安くはないな、という印象で、特に何も買わなかった。 登山用品店で、時間を使いすぎ、そのほかの土産を買う時間がなくなった。東大門で食事を済ませて、急いで空港に向かう。 もう十分、おなか一杯、120%という感じである。技術的にはそれほど難しいルートには行っていないが、精神的に厳しいルートが多かった。特にスラブは5.7-5.8くらいのグレードだとほとんど残置ボルトはない。ちょっとしたクラックがあれば、カムを決められるのだが、それすらなく10m以上ランナウトすることも多い。「おろし金」といわれる目の粗い花崗岩はフリクションが良く効くが、それでも怖い。幸い今回は大きく落ちる(滑る)ことはなかったが、周囲からは(落ちた人の)いろんな悲鳴が聞こえてきていた。原因は分からないが、6/30にも骨折者が出る事故があったようだ。 日本だったら途中2-3本はボルトがあるだろうと思われるスラブに、全く支点がないというのは、それに慣れていない我々にとっては非常に厳しいものだ。フリーの岩場は日本と韓国しか知らないので、世界的に見て、日本が甘いのか、韓国が普通なのかは分からない。でも、やはりあのランナウト距離は長すぎると思うし、危険だと思う。そうは言っても、郷に入りては郷に従えで、ボルトがないものは仕方がない。それでも登れる精神力を付けなくてはならない。 楽しかったと一言で言ってしまうには、苦しいことが多すぎたが、それでもやはりここにはもう一度来たいと思う。 最低10日は必要なヨセミテは、サラリーマンにはそうそう気楽にいけるところではない。規模は明らかに小さいとは言え、仁寿峰なら、3泊4日でも十分満足できる。これくらいの休みならば、気合を入れなくてもとることができるし、メンバーも集めやすい。 スラブの怖さは一級品だけど、ロケーションや岩の感触は最高。 次はクラックをもっと練習して、シュイナードAとクンヒョンキルを登りたい。どちらも5.10aのクラック。そのためにはせめて日本で5.10bcくらいのクラックが登れないと厳しいだろう。まだまだ先は長い。 梅雨時のこの時期は、日程の選択を誤ったかと思ったが、運良く好天に恵まれた。時々ぱらぱらと降ることはあったが、本格的な雨は7月1日の深夜のものだけだった。時期的には、5月の連休明けか10月くらいが良いらしい。 休日は非常にクライマーが多く、どのルートも人で一杯だった。たまたま我々が登ったルートは先行パーティがおらず、順番待ちする必要がなかったのは幸い。ルートはさまざまに交錯しているので、ルートにこだわらなければ、随時空いているところを選んで登っていけばよさそうだ。 ちなみに、この時期、日の出は5時半ころで20時くらいまで明るい。 |
7月1日(月) 曇り
6:00 起床
6:30ころ 朝食
8:10 白雲山荘発(21.8℃)
8:25 オージースラブ取付(21.5℃)
9:15 オアシステラス(23.5℃)
9:15 登攀開始【ウィディキル(医大ルート)】
11:15-12:00 Rest(耳岩下部・21.2℃)
12:00 下降開始(懸垂50m3P)
13:00 オアシステラス(22.9℃)
13:00 登攀開始【インスA】
16:00 終了点(22.9℃)
16:20 懸垂下降点着(23.7℃)
17:10 下降終了(21.7℃)
17:30 白雲山荘着(22℃)
18:30ころ 夕食
22:00 消灯
7月2日(火) 曇り
6:00 起床
6:40ころ 朝食
7:20-8:05 白雲台方面散歩
8:20 白雲山荘発(24℃)
8:35 山岳警察救助隊駐在所(24.1℃)
9:00 トソンサ着(23.8℃)
9:00-9:35 Rest(道セン寺見学)
10:05-11:00 ウィドン(風呂)
東大門に移動して買い物、食事(焼肉)
15:15 東大門発
16:15 仁川空港着
18:40 仁川空港発(大韓航空KE705便)
20:55 成田空港着
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