「嘆きの(雪)壁」
五竜岳東面 G5(GV)稜
2005年4月9日(土)〜10日(日)
メンバー:清野、神谷(記)
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<9ピッチ目からG5稜を見下ろす>
「五竜岳〜八峰キレット〜鹿島槍ヶ岳」「鹿島槍北壁」そして「五竜岳東面」で『雪の後立山三部作』と考えていた。 これは、昨夏キレット小屋で働きながら思っていたことだ。 毎日北壁を眺めて生活していれば、そこを登ってみたくもなるし、夏に3ヶ月間生活していれば、冬はどうなんだろう、と思うようにもなる。 しかし、正月のキレット越えは、悪天のため、八方尾根から下山。 3月の鹿島槍北壁は、雪の状態が悪く、天狗尾根から北峰の往復にとどまった。 目標は一つも達成していない。 そして、今回が完結編となるはずだった五竜岳東面。ルートはG5(GV)稜とした。 天気は良さそうだ。 しかし、問題は雪の状態。 今シーズンは毎回それに悩まされてきた。 街ではちょうど桜が見頃となっていた。気温も急激に上昇し、一気に春が来た。 そんな4月であるのだから、さすがに雪で困ることもないだろうか、とも思っていた。 ところが、五竜はそれほど甘くはなかったのである。 4月9日 遠見尾根から歩き出す。 テレキャビンの運行は8:15から。慌てても仕方がないので、朝はゆっくり起きて、身支度を調える。 駐車場には、スキー客に混じって登山姿の人たちも何パーティか見受けられた。 9時前に地蔵ノ頭をスタート。トレースは薄くついているが、ほとんどないようなものだ。しかし、ラッセルというほどではなく、ワカンは不要。一気に高度を上げていく。 2時間で大遠見山付近に到着。ここから南に延びる支尾根を下る。この先は雪が深いので、ワカンを使用する。シリセードで一気に下りたかったが、ところどころクレバスが開いていたので、様子を見ながら慎重に行く。沢に降り立つ最後の部分だけシリセード。 白岳沢はデブリの巣。背丈以上の雪の固まりがゴロゴロしている。幸い、今すぐに雪崩が来る、という雰囲気ではなかったので、デブリの真ん中を突っ切り、G5稜の末端に取り付く。始終周りを見渡して、いつ雪崩が来るか、と思いながら歩くのは、あまり気持ちのいいものではない。<★支稜を下り、デブリの真ん中を> 尾根末端から、いきなり稜に乗り上げるのではなく、しばらくC沢を尾根沿いに詰めていく。<★C沢を詰める> 遠見尾根の稜線上は風が吹いて少し寒くも感じたが、白岳沢に降りると風が遮られて、暑くてたまらない。半袖になって、汗をかきながら登る。<★暑いので半袖で> これ以上行くと、岩壁になって尾根に取り付けなくなる、というくらいの場所にあるルンゼから雪壁登り。 急斜面を一気に登るので、汗が滴り落ちる。 ワカンをつけて、膝下くらいのラッセルだった。 尾根に出たところで、ひと休み。空身になって先の様子を見てみると、ここからリッジでロープが要りそう。 ワカンをはずし、アイゼン着用。ギアを出して登攀準備する。 1ピッチ目【神谷リード】 C沢側に雪庇が張り出しているリッジ。雪が深くて苦労する。<★このあたりからロープをつけて> 2ピッチ目【清野リード】 さらにリッジを登り、ルンゼの末端でビレイ。<★ルンゼの末端まで><★リッジを行く> 3ピッチ目【神谷リード】 ここからルンゼ(雪壁)となる。気温も上がり、雪の状態が悪い。傾斜が強くなると、なかなか進まない。 2箇所灌木で中間支点を取る。ビレイも灌木で。<★振り返るとトレースが続いている> 4ピッチ目【清野リード】 ここから左のルンゼに入る。ビレイヤーからトップの様子が見えない。ときどきルンゼをザァーっと雪が流れてくるのを見るたびに、ひょっとしてトップも一緒に落ちてくるのではないか、と緊張する。 ルンゼ内は草付混じりのダブルアックス。<★ルンゼ直登> 5ピッチ目【神谷リード】 ルンゼを登り切ると、傾斜が落ちてきた。中間支点の取れそうな灌木もなく、コンティニュアスに切り替える。そのまま登っていくと、岩壁の基部に突き当たったので、一旦ピッチを切る。 基部は平らになっていて、うってつけのビバークサイト。<★岩陰にツエルトを張る> そろそろ17時だし、このあたりが潮時か、と思う。 ここでビバークするとして、偵察とラッセルのため、もう少し先の様子を見に行くことにした。 岩壁の直登は無理なので、ビレイしてもらって、右から回り込む。 トラバースしてから雪壁を登って尾根に登り返すのだが、雪が腐っていて、非常に悪い。足場が決まらず、腿くらいまで埋まり、ずるずる落ちてしまいそうになる。 尾根に出ると、その先は、雪稜で問題なさそう。様子を見て、そのまま引き返す。 下りのクライムダウンがまた怖かった。 風もなく、静かな夜。 4月10日 朝から天気が良いが、予報では午後から低気圧の接近で崩れるらしい。テレキャビンの最終が16:30なので、できれば、午前中に五竜岳頂上までは行っておきたい。 6時前に登攀開始。 6ピッチ目【神谷リード】 朝は雪が締まっており、快適にさくさく登れる。昨日苦労したトラバースからの雪壁登りも、全く問題なし。こんな状態だったら、この先もスピードを上げて行けるのだろうが。 7ピッチ目【清野リード】 快適な雪稜。雪の状態も良い。中間支点を取るほどのこともなく、1箇所スノーバーを使ったのみ。後半はコンティニュアスでルンゼ入り口まで。<★快適に朝のリッジを><★コンテで進む><★雪壁の取付まで> 8ピッチ目【神谷リード】 ここがいわゆる第一の核心部。 D沢からせり上がっている岩稜とのジャンクションに出る岩壁の部分。 岩壁を左ルンゼから巻いて、雪壁に取り付く。 効率的なルート取りを考えるが、どこから登っても斜度は変わらなさそう。見上げるような雪壁だ。 逃げ場はなく、このまま直登するしかない。 気温はかなり上がっており、すでに周りの谷では雪崩の音が響いている。 朝は堅く締まっていた雪も、もうグサグサに腐り始めている。 出だしのルンゼは傾斜も緩く、何とか登れる。雪の中からハイマツを掘り起こして、中間支点として2箇所取る。 問題はその先だった。 ほとんど目の前に雪壁が迫ってきている状態。 雪が締まっていれば、ダブルアックスで、さくさくとアイスクライミングのように登れるのだろうが、この腐った雪では、いくらバイルで叩いてもスカスカで手応えがなく、いくらアイゼンで蹴りつけてもズルズルとすべり落ちてしまう。 ここはもう地道に少しずつ雪を削って、階段状にしながら登るしかないのか。 まずは目の前の雪をバイルで崩す。3回くらいバイルを振り回すと、ようやく雪が押し固まって、腰から上がテーブル状になる。そこにバイルを垂直に差し込むと、何とか体重が支えられるくらいは安定する。右手が固まったら次は左手だ。こっちも雪を押し固めて身体を支えられるようにする。 そして、足を持ち上げる。 が、ここが問題。 蹴っても蹴っても足場が安定しない。体重を掛けるたびに、どんどん潜っていく。 今の足場より少し上の部分を蹴りこみ、雪を押し固めて、立ち上がる。 圧縮された雪のおかげで、ほんの2-3cmはさっきより高い位置に来ただろうか。 手を伸ばしてみると、さっきは届かなかった場所まで、バイルが届くようになった。 再びバイルで雪を崩し、押し固め、両手で踏ん張るようにして、足を持ち上げる。が、やはり足が上がるのは2-3cmくらい。 何度も何度も繰り返す。 ときどき、足下が崩れて、前より身体が下がってしまう。 3歩進んで2歩下がる。 バイルを振る腕は、フラフラになってきた。 つま先立ちの足は、もう攣りそうだ。 アイスクライミングなら、バイルにフィフィを掛けてテンション、と言いたいところだ。しかし、こんな雪壁では休みようがない。 精神的にもきつくなってきた。疲れたからトップを交代してください、と言いたいところだ。しかし、この場からどう降りて交代すればいいと言うのだろう。 登るしかないのだ。 そうは分かっていても、身体はまるで進まない。 腕の届く限りバイルをふるって雪を削る。と、手の届かないところはハング状の雪壁が残る。少し身体を上げられる様になり、そこを削ると、ハングが崩れて頭にまともに雪塊が降ってくる。サングラスは曇る、背中に雪が入る。 雪壁の終わりは目の前に見えているのに、まるで近づかない。 腕が疲れた。 足が痺れる。 腕が上がらなくなってきたので、身体を雪面に押しつけて固めてみる。顔で雪を削ってみる。 ああ、これって夢枕獏の「神々の山嶺」に出てきたな。 『あしが動かなければ手であるけ。 てがうごかなければゆびでゆけ。 ゆびがうごかなければ歯で雪をかみながらあるけ。 はもだめになったら、目であるけ。 目でゆけ。 目でゆくんだ。』 しかし、歯でいくら雪をかんでも、雪壁は崩れないのだよ。目でいくら睨んでみても、雪壁を登ることはできないのだよ。 やはり、手足を動かさなくては。 何度も何度も岩を山頂まで運び続ける、神話のシーシュポス(シジフォス)。 →http://www.mas-yamazaki.com/camus.html 賽の河原で石を積み続ける子どもたち。 →http://hirano.us/toru/sai/index2.html まさにそんな気分。やめるわけにいかない苦役をひたすらに続ける、これは言わば行(ぎょう)のようなものか。 ---嘆きの(雪)壁。 いや、嘆いている場合じゃない。 それでも少しずつ登ってきた。 あと少し。しかし、雪壁の最後は本当に雪がオーバーハングになってきて、まるで進めなくなった。 仕方がないので、左にトラバースを始める。 これだって楽じゃない。 トラバースしながら登っているつもりなのだが、逆に降りているような気がする。 まだか、まだか、まだか。 繰り返される作業。そう、もう“作業”としか言いようがない。 最後に取った支点は10mくらい下のスノーバー。ここで力尽き、滑り落ちたらどうなるんだろう。スノーバーで止まるかな。ビレイヤーと一緒に谷まで落ちるのかな。そんなことを思う。 1時間以上の苦闘の末、ようやく雪壁を抜け、リッジに出た。 もう、そのまま倒れ込んでしまいたい。 腕も足もほとんど限界。 全力を使い果たした感じ。 スタンディングアックスビレイで、フォローを迎える。<★雪壁と格闘中> 9ピッチ目【清野リード】 雪壁は終わり、リッジとなる。雪は深いが、普通に歩ける。ただそれだけでありがたい。<★8ピッチ目が終わったあたり> 10ピッチ目【神谷リード】 ひと山登って、リッジの上に出る。 そのまま歩いて行けそう、と思ったが、目の前に巨大なキノコ雪が立ちはだかった。高さ5-6mくらい。しかも右半分は雪庇になっている。<★このキノコ雪をどうする!?> こんなもの登れるわけがないので、右か左から巻こうとするが、どっちも悪い。 左を巻こうとすると、相当下に降りて登り返さなくてはならない。 右は巨大キノコ雪の雪庇の真下をくぐり抜けていくようで、気持ち悪い。 ロープの長さにはまだ余裕があったが、いったん清野さんを迎えて、対応を考える。 11ピッチ目【清野リード】 ビレイして左に少し降りてみるが、下りすぎるため、やはり問題外のようだ。 右は、降り口から雪庇が発達していて、クライムダウンは不可能。キノコ雪の根元にある細い灌木で何とか懸垂下降するしかないか、と近づいてみると、雪に埋もれた残置ピトンを発見。 ここは懸垂下降する場所らしい。 ピトンが3つと古い残置スリングがあった。 フォローを迎えて、下降準備。雪庇を崩して、25mギリギリ(50mシングルを二つ折り)まで下に降りる。<★懸垂下降して> そこからルンゼを登り返し、キノコ雪の向こう側のコルに出る。 ここが第2の核心部、G5の頭の岩壁直下であった。 テルモスと行動食でひと息入れる。 その間にも周りでは、バンバン雪崩が起こっている。 昨日は、スノーシャワーか小雪崩程度だったのだが、今日は、大きいのがそこかしこで落ちている。 これから登ろうという雪壁にも、ときどきドサッと落ちてきて、そのたびにびくっと驚く。 さっさと登ってしまいたい。 すでに9:30近い。予想以上に時間がかかっている。 8ピッチ目だけで1時間半もかかっているので、当たり前か。 12ピッチ目【神谷リード】 ここが最後の岩壁(のはず)だ。と言っても雪壁だけど。<★最後の壁を見上げる> 出だしは緩傾斜だが、徐々に急になってくる。 しかも5分に1回くらいスノーシャワーが直撃する。 自分が登っている音にかき消されて、自分では上から降ってくる雪に気付かない。 ビレイしている清野さんが「来た!」とか言うのを聞いて、身を伏せる。 直後に全身を雪が叩きつけていく感じ。 身体が持っていかれるほどの大きいものは来なかったが、ひやひやしながら登った。中間支点もスノーバー1本くらいしか取れない。 傾斜が急になってくると、またしてもグサグサの雪壁。 40mでハイマツにたどり着いたので、そこでピッチを切る。ちょうど、左右のルンゼの分かれ目のあたり。<★ビレイ点からコルを見下ろす。背後のキノコ雪が大きい> 13ピッチ目【清野リード】 右のルンゼは、傾斜が急な雪壁で、登ったら相当時間がかかりそう。 左のルンゼへ行く。 露出したハイマツを使ってトラバース。 そこからルンゼに入っていく、ようなのだが、ビレイヤーからは死角になって見えない。 トップが雪壁を崩しながら登るので、ルンゼに雪がひっきりなしに落ちてくる。しかも大量に。そのたびに、トップが落ちたんじゃないかと身構えてしまう。 最初は、自分より左側に雪が落ちていったので、トップが落ちないように、と考えているだけで良かったのだが、そのうちにビレイしている私の頭の上から雪が落ちてくるようになった。 上部で、右に斜上し始め、それがちょうど、ビレイ点の真上にあたっているようだ。 移動したくても逃げ場がない。ひっきりなしに雪塊が落ちてくる。首筋から背中にどんどん雪が入ってくる。頭が重いな、と思ったら、ヘルメットの上に三角帽子のように雪が積もっていた。 湿った雪なので、全身びしょぬれ。 オーバーミトンは中に水がたまって、振ると、中で、たぷたぷと音がする。 陽が当たって、気温は高いとは言え、さすがに身体が震えてきた。 早く登ってくれ、と願うのみ。じっと我慢する。 しかし、結局右からは登れなかったようで、「一旦降りるから」とコールがかかった。 えーっ。 あらためて左のルンゼを登り出すが、ロープの流れが悪くなり、ルンゼの途中でピッチを切る。 中に入ってしまうと単なるルンゼだが、外から見ると、ここはヒマラヤ襞の真ん中に当たるのだろう。そう考えると、すごいところにいるな、という感じがする。<★右側はヒマラヤ襞> 14ピッチ目【神谷リード】 さっきのビレイで、全身が冷え切り、手が痺れて上手くバイルが握れない。動いているうちに暖まるだろうと、手袋をしぼって、ミトンの水を排出して、登り出した。 ルンゼとは言っても、結局は雪壁。<★グズグズの雪壁> 腿くらいまで埋まりながら、バイルで雪を削って、一歩足を上げて、をまた繰り返す。 ルンゼ状だったので、左右の雪壁を使って、チムニーのように登る。 足を真上に上げようとすると、雪がじゃまで足が高く上がらない。そのため、必然的に、右へ左へ足を振り分けながら登った方が楽になる、という寸法。 しかし、今ビレイしている清野さんはルンゼの途中にいる。 ということは、ここで落としている雪は、その後ビレイヤーを直撃。頭から雪をかぶっている。 いや、別にさっきの復讐してるわけじゃないんです。 雪を落とさないと登れないし。 すみません……。 このピッチで主稜線に出る、と言うのは分かっているが、身体が言うことを聞いてくれない。雪の状態もますます悪い。スピードは上がらない。支点も取れない。 それでも何とかG5の頭へ。<★最後の力を振り絞り> このときの嬉しかったこと! ほんと、叫びだしたいくらい。 もう雪壁はないんだ!終わったんだ! 主稜線に出て、ゆっくり休みたかったが、黒部側からの風が吹き付けてきて、せっかく暖まった身体がまた冷えてきた。濡れた身体に風が当たるので、非常に寒い。 とりあえずロープだけ片付けて、先へ進む。<★G5稜を見下ろす(奥側)> しばらく歩いて岩陰になったところで、ようやくひと休み。 手袋を交換。フリースを着る。 テルモスを飲んで少し落ち着いた。 五竜岳頂上に着いたのは13時。 16:30のテレキャビン最終に間に合うかどうか厳しいところだ。 五竜山荘に向けて、一気に下って、と思ったが、雪の状態がやはり悪く、全然進まない。遠見尾根から五竜往復パーティがいたはずなのだが、どうやらG2あたりで引き返したらしく、そこから上のトレースがない。 山荘に着いたときには、もうフラフラになっていた。 五竜山頂への登りより、そこからの下りの方が疲れた。 白岳を登って遠見尾根を下る。それがまたやたらに長い。 足下は悪いし、大遠見やら中遠見やらで登り返すのがきついのなんの。 ふと、鹿島槍北壁を見ると、今日の暖かさのせいか、昨日より明らかに雪が落ちていた。デブリの量も増えているようだ。<★鹿島槍北壁とカクネ里><★昨日の北壁> なんとか16:30を目標にがんばっていたのだが、小遠見に来て、地蔵ノ頭がはるか先だったのを見てあきらめた。 結局地蔵ノ頭に着いたのが、17:15。まるで間に合わなかった。 でも、スキーヤーのいないスキー場をシリセードで一気に下ったら、20分ほどで下に着いた。意外に早かったが、ズボンのお尻はかなりすり減った。 実質登攀約9時間。 グサグサの雪壁にやられた、という感じだ。 雪がもっと締まっていれば、こんなに時間はかからなかっただろうし、余裕を持って雪稜を楽しめたと思う。 しかし、今回の状態では、どうにもこうにも。 雪が多く、しかも気温が高いので、雪の状態が悪い。 グズグズ、グサグサ。 とくに雪壁で苦労させられた。 締まった雪なら、サクサクとアイゼンを利かせて登れるのだろう。実際、2日目の朝はとても気持ちよく登れた。ただ、それもほんの1時間程度のことで、7時を過ぎて陽が当たり出すと、急に足下が潜るようになった。 初日は、テレキャビンの運行に合わせての出発となり、時間が遅かったために、こんなに悪い条件なのかと思ったが、2日目のことを考えると、朝早くてもあまり条件は変わらないようだ。 雪崩も初日より2日目の方が頻発していた。 沢沿いだけでなく、雪があって、傾斜があればどこでも起きる、と言う状態で、いつどこから降ってくるか分からず、不安を感じながら登っていた。 支点は、もっと灌木が利用できると考えていたのだが、雪が多くて埋まってしまっているせいか、思ったほどは使えなかった。 スノーバーも2本持っていたが、この雪の状態では、果たして利いていたのかどうか。 ビバークした場所は、G5稜の中では、ここしかない、と言うくらいの最適の場所だった。もちろん、リッジ上でも掘り込めば、場所は作れるだろうが、そこはちょうど岩壁基部の平らになった場所で、広さも適当。風もなく、良いサイトだった。 登る前は、コンテを使って、同時登攀できる場所が多いだろうと思っていたが、結局コンテが使えたのは、2-3ピッチくらい。あとはずっとスタカットが必要だった。 下山して、ここまで疲れ切り、全身の力を使い果たしたような感じになる山行は久しぶり。それだけ充実していたと言うことだ。雪壁の処理などで苦労しただけあって、主稜線にたどり着いたときの感慨は、何物にも代え難いものであった。 五竜山荘、キレット小屋に関わった人間として、五竜岳東面を登れた、と言うことには、また格別の味わいがある。 『雪の後立山三部作』は、何とか最後だけちゃんと締めくくることができた。あとの二つは来シーズン以降の課題としよう。 G5(GV)稜は遠見尾根からよく目立つし、きれいで素晴らしいルートだと思う。ただし、雪の状態が悪くなければ……。<★遠見尾根からのG5稜> |
4月9日(土) 晴れ
8:45 地蔵ノ頭(13℃)
10:45 大遠見山(11℃)
11:45 下降開始(21℃)
12:05 G5稜末端(15℃)
13:30 G5取付(16℃)
14:10 登攀開始(14℃)
-14:45 1ピッチ目(2℃)
-15:05 2ピッチ目(2℃)
-15:45 3ピッチ目(0℃)
-16:15 4ピッチ目(0℃)
-16:45 5ピッチ目(テントサイト着・1℃)
4月10日(日) 晴れのち曇り
4:00 起床
5:50 テントサイト発(8℃)
-6:05 6ピッチ目(14℃)
-6:25 7ピッチ目(7℃)
-7:50 8ピッチ目(15℃)
-8:15 9ピッチ目(7℃)
-8:35 10ピッチ目(7℃)
-9:15 11ピッチ目(4℃)
-9:40 rest(10℃)
-10:15 12ピッチ目(4℃)
-11:20 13ピッチ目(4℃)
-11:50 14ピッチ目(主稜線・2℃)
13:00 五竜岳頂上(4℃)
17:15 地蔵ノ頭(9℃)
18:00 駐車場(3℃)
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