「八ヶ岳でのアイスは続く。」
八ヶ岳 広河原沢三ルンゼ、右俣クリスマスルンゼ(アイスクライミング)
2001年12月8日(土)〜9日(日)
メンバー:村野、神谷(記)
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<クリスマスルンゼ中央部>
今季二度目のアイスクライミングも八ヶ岳。 今回は広河原沢となった。 広河原沢は二回目。前回は2年前の年末。三ルンゼを登ったが、終了間際の妙に難しいミックス壁が印象的だった。 先々週のジョウゴ沢の感覚では、氷結状態は、期待できそうに思えた。今回は、2週間後に黄蓮谷左俣を控え、その調整も意味もある。 舟山十字路には立派なゲートができていたので、ゲート手前で車を停めたのだが、後ろから来る車は、ゲートを開けて次々に中に入っていく。その車は、どう見ても(ゲートを管理している)関係者のようではなく、ただの山ヤのものに見える。 ゲートを見ると、鍵はかかっておらず、勝手に開けられるようだ。帰ってきたとき鍵がかかっていたら怖いな、と思いつつも、思い切って中まで車を進める。結構な数の車が入っているようだ。われわれは堰堤手前で駐車。 12月8日(土) 広河原沢 三ルンゼ かなりの数のクライマーが入っているようで、広河原沢にはトレースがしっかり付いている。2週間前の八ヶ岳はほとんど雪がなかったのだが、先週一気に積もったようだ。見上げる稜線上も白くなっておりこの間とはすっかり様変わりしている。 二俣を過ぎ、中央稜の道標がある少し手前でテントを張る。少し登ったところの沢には水が流れていた。 テントを立てて、そのまま三ルンゼへ。本谷最初の滝は全く凍っていなかったので、左から巻く。先行パーティが大勢いて、しかもみんな三ルンゼに行きそうな雰囲気で、ちょっと気が滅入る。さらに本谷を進む。約8mの滝でアイゼンをつけるが、ロープは出さない。後ろから続々と続いてくる<★後ろから続々と>。その先の5mほどの滝は、登られすぎているのか、氷がはがれて上部はミックスのような状態<★上部はミックス的>。後続が大勢いるので、ここもロープなし。 左から一、二ルンゼ出合の大滝が見えた。まだ誰も登っていないような感じでちょっと魅力的だったが、氷が薄そうなのと、ひっきりなしにスノーシャワーが落ちていたので、見るだけにとどめた。<★魅力的な出合の大滝> いよいよ三ルンゼ。小さな滝を次々越え、3段30m大滝へ。しかし、先行はいるは、後続はいるはで、大変な順番待ち。見た目にもたいしたことがなさそうだし、ロープを出していたら、時間がかかりそうなので、結局ロープなしで登る。ほとんど階段状。<★人がいっぱいの大滝> 大滝を越すと、二俣に出た。右俣には、魅力的な8mほどの氷瀑がかかる。しかし、先行するすべてのパーティが左俣に行っているようで、氷瀑までのトレースがない。とりあえず様子を見るだけでも、とラッセルにかかる。腰から胸のラッセルが40mくらい。下部から見上げると、何とか登れそうに感じたので、登攀準備にかかる。ここまで、ロープを出していなかったし、このまま終わったら消化不良になりそうなので、なんとしてもこの一本は登ってやろうと思った。<★上部は垂直な氷瀑> 右から取り付くが、ツララ状で、状況が悪いので、左にトラバース。真ん中に出る。上部から次々にスノーシャワーが降りかかり、顔にあたって、非常に冷たい。シャワーに負けず、今回新調したブラックダイヤモンド「レイジ」のバイルを叩き込む。レイジが良い音を立てて刺さってくれると、とてもうれしい。滝には最近登った形跡が全くない。ここまでの三ルンゼは、ずっと人の後を歩いてばかりだったので、アイスはやっぱりこうでなきゃ、という感じがしてくる。一手一手、一歩一歩慎重に打ち込む。後半3mは、ほとんど垂直に感じられた。グレードIV+〜V-位はありそうだ。あっという間に腕がパンプしそうだったが、片腕でぶら下がって、もう片腕を下に向けて必死で振る。なるべくならフィフィを使わずにがんばろうと思った。そして、落ち口へ。傾斜がゆるくなっても、レイジのシャフトの曲がり具合がちょうど良く、手を打ちつけてしまうこともなく、カッチリ刺さってくれる。今まではストレートシャフトだったので、打ち込むときに苦労したものだ。最後まで油断せず慎重に抜けきる。ノーテンション、ノーフィフィでクリアだ。短かったとは言え、非常に大きな充実感を得た。 スクリューで支点を取って、セカンドを迎える。その先の3mほどの滝を越えると、あとは延々ラッセル。腰から胸くらい。疲れた体に鞭打ちながら、ひたすらラッセル。45分ほどで南稜P3に出る。稜線上は強風が吹いていた。今日は、冬型になって、晴れるのかと思っていたが、意外に雲が多かった。気温は朝からあまり変わらずずっと−10度くらい。アイスにはちょうど良かったかもしれない。 心地よい疲労感を持ちながら、テントに戻る。青ナギからの下りは、雪がつるつるで、何度滑ったことか。いっそのこと尻セードで一気に下りたかったが、樹林帯なので、それもできない。 12月9日(日) 広河原沢 右俣 クリスマスルンゼ 今日は、右俣へ向かう。目的はクリスマスルンゼとポストクリスマスルンゼ。上部は時間の都合で抜けられないだろうと考えていた。昨日、右俣に入ったパーティも多かったのだろう。トレースはばっちり付いて、その踏み固められ具合から、よほど多くの人が入っているのだろうと予想された。 朝一番で出かけたのが良かったのか、クリスマスルンゼにはまだ誰もいなかった。下部は、緩やかな右端をノーロープで登り、スクリューでセルフビレイを取って、準備にかかる。上部は、15mくらい。真ん中の凹角部分は、相当多くの人が登っているようで、ほとんど階段状に見えた。ただ、右から水流があるのが、いやな感じがした。<★クリスマスルンゼ全体> ともかく、村野さんリードで取り付く<★中央部をリード>。案外スムーズに進んで、私もフォローで続く。出だしが、シャワークライミング。こういうとき、眼鏡は非常に不利だ。一気に視界が悪くなって、ほとんど足元が見えない。コンタクトにしておけばよかった、と思ったが、どうしようもないので、勘を頼りに蹴りこむ。フォローだし、スタンスもすでに出来上がっているような状態だったので、何とか登りきれた。そこから懸垂下降。その先は、ラッセル&ナメ滝になってしまいそうなので、止めておいた。 続いて、左手から取り付く。一本目の支点を取るが、ツララ状で、その先、非常に難しい。登った形跡があるので、登れなくはないのだろうが、バイルもアイゼンも、打ち込むと、その下が一気に崩れてしまうくらいもろい。引っ掛けで行くしかない。慎重に氷の隙間にバイルを引っ掛ける。アイゼンは、強く蹴り込めないので、なんとなく置く。2手、3手と登ったところで、引っ掛けただけのバイルがつるっと滑ってフォール。1mくらいしか登っていなかったので、足からすとんと落ちた。何か方法はないかとじっくり氷を観察するが、たたけば割れてしまうので、やさしく、包み込むように、そうっと足と手を置いていくしかなさそうだ。……。それは私の今のレベルではできそうにない。素直にあきらめることにした。引っ掛けクライミングは、まだまだ修行が足りません。<★登れなかった左からの取り付き> 今度は右から取り付いてみる。こっちのほうが、氷の厚みも合って、多少強くたたいても全部崩れ落ちるということはなさそうだ。慎重に手と足を極めて行く。左腕を伸ばした状態で、右手でスクリューをセット。これがうまく入ればいいのだが、なかなかそうはいかない。すぐにパンプしてしまい、3本目のスクリューは、フィフィを使ってセット。苦渋の選択だったが、やむをえない。5mほど登ると小テラスがあって、少し休める。しかし、腕はかなり厳しい状態だ。特に左腕がつらく、打ち込みもフニャフニャと力が入らないものになってしまう。さらに上部を登りだすが、どうにもきつくなって、2回目のフィフィ。上部も意外と立っているが、左腕は限界寸前。トレーニング不足を感じた。全体でIV+くらいか。こまめに支点を取ったので、スクリューは7本くらい使った。<★小テラスの部分> セカンド村野さんを迎えて、懸垂で降りる。少し休んでポストクリスマスルンゼを目指す。ちょうど、そちら方面から降りてきたパーティがあったので、様子を聞いてみた。 「上には真っ黒な壁しかありません。」 ……。下部のナメ滝はあるものの、見えている限りでおしまい。核心となる10m垂直V級の氷瀑は全くない、とのこと。 本谷はクリスマスルンゼ以降トレースもなく、かなりのラッセルを強いられそうだったので、手前に戻って、「武藤返しの滝沢」へ。 が、10人くらいのパーティが、よってたかってトップロープで登っているので、とても登れる余地はない。仕方ないので、時間は早いが、そのまま下る。<★やたらに人がいて登れない> やっぱりアイスは面白いな、と思う。登りきったときの充実感は、岩や沢では味わえないものがある。一歩ずつ自分の力で登り、自分で支点をセットしていく。しかも、同じ氷でも登るたびに状態は変わり、新たな感動がある。たった8mほどの小さな氷瀑でさえ、全力を尽くして登りきると、体が震えるような喜びを感じられる。残念なのは、アイスシーズンはあっという間に終わってしまうことだ。一年中アイスができればいいのに、と思う。 |
12月8日(土) 曇り時々晴れ
22:00 立川発
1:00 車着
6:30 起床
8:00 歩き出し
8:50 二俣
9:30 テント設営
10:30 三ルンゼ入り口
12:00 右俣8m滝着
13:00−13:15 終了点
14:00 阿弥陀南稜稜線着
14:25 青ナギ
15:30 テント着
12月9日(日) 曇り時々晴れ
5:30 起床
7:05 テント発
7:25 右俣出合
8:05 クリスマスルンゼ着
11:45 クリスマスルンゼ発
12:25 武藤返しの滝沢発
12:50 テント着、テント撤収
13:20 テント発
13:45 車着
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