1月20日(木)快晴<プラサ・アルヘンティーナ〜ベースキャンプ(往復)>【5日目】

報告内の★マークは、写真へのリンクです。

7:15起床 気温−1℃[脈拍70回/分]
7:15-8:30朝食(マギー「Sopa Lista(GALLINA味)」、白米少々、紅茶、砂糖)、出発準備
7:45日の出
8:30Plaza Argentina(プラサ・アルヘンティーナ、4200m)出発15℃
9:20-9:30R1(4400m)15℃
9:55-10:05R2(4480m)17℃
10:30-10:40R3(4590m)15℃
11:10-11:20R4(4670m)16℃
11:55-12:05R5(4795m)16℃
12:55ベースキャンプ(5000m)着12℃[脈拍94回/分]
13:10-25昼食(フランスパン、チーズ)
13:25-14:00テント設営、デポ
14:00ベースキャンプ出発15℃
14:25-14:35R6(4680m)17℃
15:15Plaza Argentina着25℃[15:45脈拍98回/分]
16:20間食(オレンジ各1個)
17:05-17:25水汲み
18:00-19:05夕食(パスタ、チキンコンソメスープ、紅茶、砂糖)
※エスファイト各1錠、パンビタンハイ各3錠、バンテリン少々
18:45日の入
21:00消灯(21:15日暮れ)
【行動5:40 実働4:20 水4.2リットル】(内UP行動4:25 実働3:15)


 昨日同様、それほど高度の影響を感じることなく、よく眠れた。上をむいて寝ていると、上着のポケットに入っている財布などに腹部を圧迫され、少し苦しかった。ポケットの中身を出してしまえば問題はない。
 朝食はメンドーサで購入したラーメン(ヌードル)。ボリュームを上げるために、少し残っていた白米を混ぜて作る。ラーメンの作り方は日本と同じ。沸騰したお湯に麺を入れて2―3分。ちなみにGALLINAは、鶏味。高度のためだろうが、麺がパサパサ、もそもそしていてあまりおいしいとはいえない。下界で試食したときには、まずまずと感じたのだが。しかし、食べられないわけではないので、こういう食べ物だと思って我慢する。米もパサパサ。
 Eureka!テント(テント大)に盗難防止用の南京錠をかけて出発する。プラサ・アルヘンティーナは人が多いこともあり、盗難もよくあるという話を聞いた(ノーマルルートのBCであるプラサ・デ・ムーラス程ではないようだが)。盗まれた装備はメンドーサの街の装備レンタル屋などに並べられていたりするそうだ。用心するに越したことはない。
 さすがに4200mを超え、約20kgの荷を背負うのは厳しい。一歩一歩が非常に苦しい。ノロノロと亀のようにしか進めない。R1の手前に飛び石で渡れる渡渉地点がある。その渡渉の後、目の前に崖が立ちはだかる。なんとなくつづら折りで踏み跡が付いているものの、単なる土の崖なので、足がずりずりと埋まってしまう。頻繁に自然崩壊も起こっており、無理やり一気に登るしかない。非常にいやらしい場所。ここを最初の関門「ザレザレ崖のぼり」と名づける<★これが第一関門>
 崖を登りきると、しばらくはモレーン上を進んでいく<★モレーンを歩く>。ケルンがあちこちにあるし、トレースもはっきりしている。歩きやすい道だ。高度にもだんだん慣れてきて、肉体的にも精神的にも余裕が出てきた。途中、「ペニテンテス」に遭遇した。ガイドブックにも「アコンカグア山頂の嵐」にも出てきた「ペニテンテス」。本を読んだだけでは想像がつかなかったので、実際にどんなものか楽しみにしていた。見た感じは、ぎざぎざになっている雪渓。平べったい雪の逆つららと言えばよいのか。鍾乳洞の石筍にも似ている。「アコンカグア山頂の嵐」の訳注によれば、『乾燥した空気と強い日ざしが原因でできると考えられ、アンデスの山でよく見られる。スペイン語で「雪の懺悔者」、白衣の人が懺悔している姿に似ているところから名づけられた。』とのこと。このあたりで見られるものは1mくらいだが、大きいものでは身の丈を越えるともいう。一面に乱立するペニテンテスから懺悔者を想起すると、その数の多さに人はみな罪人なのかと思えてくる<★ペニテンテスの群生>
 連日の晴天のせいだろうか、氷が溶けて、岩雪崩を起こす音がたまに響く。遠くの方で盛大に鳴っているなと思っていると、突然目の前のルート上に人頭大の石が落ちてきた。怖い、怖い。
 R5(4795m)で休んでいると、下ってきた人が「あと30分くらいだから頑張れ」というようなことを言ってくれた。疲れていたところなので、その言葉はとても嬉しかった。しかし、実際にはそこからが本番だった。ラスト200mのアップは非常に厳しい。ガレガレの岩場で、足元がとても不安定。出す足出す足がずぶずぶと滑ってしまい、進んだ気がしない。休むところもないので、気合と根性で一気に切り抜けるしかない。結局キャンプサイトまでは1時間近くもかかってしまった。ここを最終関門「ズブズブの200mアップ」と名づける。
 5000mのキャンプサイトは、通常のC1となるところ。ペニテンテスと岩山に囲まれたフィールドである。風除けの石が積んであり、テントを張る場所はだいたい決められている。ここにも数多くのテントが張られていた。15張りくらいだろうか。ある程度広いので、それでも場所はまだ十分にある<★5000mのキャンプサイト>
 二人とも呼吸は苦しいが、頭痛などはなく体調は問題ない。昼食を軽く摂って、小テントを張ったらいったん下る。この先は初めての到達高度地点では泊まらないことにしている。アイゼンとプラブーツは持ち帰る予定だったが、ルート上で使用するところもなく、明日雪が積もることはないだろうと考え、置いていくことにする。両方で3−4kgはあるだろうから、重量的には大きい。テントには念のため鍵をかけていく。
 下りはあっという間だった。あれほど苦しんだ、「ズブズブの200mアップ」も富士山の砂走りの様にあっけなく下ってしまう。プラサ・アルヘンティーナがぐんぐんと近づいてくる。結局実働1時間5分で下に着いてしまった。予想外のスピードだ。
 プラサ・アルヘンティーナに着くと、呼吸が楽になっているのに気付いた。これが順応ということなのだろうか。今ならここで走っても大丈夫ではないかと思える。すごいことだ。しかし、落ち着いてから脈拍を測ってみると98回/分。そんなに苦しいとは感じていないのだが、高所に上がった影響だろうか。
プラサ・アルヘンティーナで、嗜好品として持ってきていたコーラを飲んだ。何だかよく分からないのだが、泡だらけである。液体を飲んでいる感じがしない。泡をむりやりおなかに詰めこんでいるような感覚だ。おなかには溜まるが、スカスカしている。これも高所の影響なのだろうか。


1月21日(金)快晴<プラサ・アルヘンティーナ〜ベースキャンプ>【6日目】


7:00起床 気温0℃ [脈拍62回/分]
7:00-9:05朝食(クノール「Sopa Facil(GALLINA味)」、白米少々、紅茶、砂糖)、出発準備
7:45日の出
9:05Plaza Argentina(プラサ・アルヘンティーナ、4200m)出発19℃
10:05-10:15R1(4440m)12℃
10:50-11:00R2(4580m)11℃
11:50-12:00R3(4755m)15℃
12:45ベースキャンプ(5000m)着12℃
12:45-13:15テント設営
16:10-16:25水汲み[17:00脈拍80回/分]
18:00-19:20夕食(クノール「Arroz Paella」、マギー「Pollo con Semola」、紅茶、砂糖)
※ エスファイト各1錠、パンビタンハイ各3錠
21:05消灯
【行動3:40 実働3:10 水3.95リットル】


 今日もよく眠れた。朝食はラーメン。昨日のものとはメーカーが違うだけで、味や作り方はほとんど同じ。米は今日使った分で終了。
 荷物の重さは昨日とほぼ同じくらい。プラサ・アルヘンティーナのすべての装備を撤収して、BCへ向かう。
 最初の関門「ザレザレ崖のぼり」は様子が昨日と一変していた。一瞬ルートを間違えたのかと思ったが、どうやら日射による自然崩壊のために、昨日歩いた部分が分からなくなってしまったようだ。ここは見ている間にも次々にルートの崩壊は起こっている。好天が続きすぎるのも問題かもしれない。
 荷物はそれなりに重いのだが、これでキャンプを一つ上げられるという充実感がある。苦しいけれど、一歩一歩あるいて行くことで、テントや装備を5000m地点に持ち上げることになる。そうすれば、BCが完成し、登山活動が本格的に始まるのだ。そう考えれば、がんばりがいもある。
 12時45分BC到着。体調良好。動くと苦しいが、座っているぶんには普段と変わりないのはプラサ・アルヘンティーナの時と同じだ。少し休んで息を整えてから、テントを大きい方に張り替え、これで登山基地の完成である。この先はここを基点にして登山を行うわけだ。必要な装備をテント内にセットする。テントの中から外を眺めていると、オオカミ(キツネ?)が歩いていった。ここまで来ると植物も動物も人間以外は全く目にしなかったので、驚いた。一体何を食べているのだろうか。やはり人間の出す残飯なのだろうか。
 14時頃、頭上に巻雲がちらほら見え始めた。東の方向(メンドーサ方面)には積雲や巻層雲。巻雲はしばらくすると見えなくなり、東の雲も17時頃には無くなった。BCでは、周期的に風が吹いている。5分から10分風が吹いて、そのあとしばらく静かになる。そしてまた風が吹き始める、といったように。風はペニテンテスの上を通ってくるので、とても冷たい。風が吹いていないときは、日射もあって暖かいのだが。
 BCの水場は、目の前にある沢。ペニテンテスが溶け出した水を利用する。水を汲む時刻によって、水量もきれいさも汲める場所も違う。しかし、汲めなくなるということはなかった。
 夕食はカレー味パエリア(クノール「Arroz Paella」)。ジフィーズのように水に入れて、かき混ぜながら水を飛ばして作る。500ccの水でほぼ2人分。とてもパサパサしているが、元々こういう味なのかもしれない。消化に悪そうな食感だった。もう一品はチキンスープ(マギー「Pollo con Semola」)。こちらは1リットルの水で5人前のものを2人で分けた。パエリアのボリュームが今一つなので、スープはちょうどいいくらいに感じた。


1月22日(土)快晴 午後一時くもり<ベースキャンプ〜キャンプ1往復>【7日目】


7:00起床 気温−3℃ [脈拍82回/分]
7:00-8:55朝食(マギー「Sopa Lista(QUESO味)」、人参1本、紅茶、砂糖)、出発準備
7:50日の出
8:55ベースキャンプ(5000m)出発3℃
9:40-9:45R1(5215m)8℃
10:25-10:30R2(5345m)6℃
10:40Ameghino(アメヒーノ)コル(5380m)6℃
11:10-11:20R3(5500m)5℃
12:00-12:05R4(5615m)3℃
12:35-12:45R5(5710m)3℃
13:25キャンプ1(5900m)着3℃
13:25-14:20テント設営、デポ[脈拍78回/分]
14:20キャンプ1出発0℃
15:05ベースキャンプ着18℃[16:30脈拍78回/分]
17:15-17:30水汲み
18:00間食(オレンジ各1個)
18:30-19:30夕食(クノール「Arroz Primavera」、クノール「Sopa de Verduras」、紅茶、砂糖)
※ エスファイト各1錠、パンビタンハイ各3錠
18:40日の入
21:00消灯
【行動5:15 実働4:40 水3.45リットル】(内UP行動4:30 実働3:55)


 昨夜はあまりよく眠れなかった。5000mになった高度のためと思われる。また、日が落ちると急速に冷え込み、寒かった。眠れないので、0時頃外に出てみた。以前よりさらに満月に近づいたようで、ますます月が眩しかった。テント内にいると、外から誰かがヘッドランプで照らしているのかと思ったほどだ。キャンプサイトの南側にある岩壁が、月光に輝き、恐ろしいほどの迫力でそそり立っていた。昼間は何とも思わなかったのだが、何故だか急に恐怖を感じた。何という場所に自分は来てしまったのか。無性に怖くなってあわててテントに逃げ込んだ。シュラフに潜り込み目を閉じたが、今見た岩壁が脳裏をよぎり、しばらく震えていた。
 朝起きると、東方に薄い巻雲がかかっていた。しかし、少量であり、すぐに消えていった。
 今日はC1建設を目指す。今日持ち上げる荷物は、以下の通り。
・ 食糧(3日分+予備1日分)
・ テント(小)
・ 燃料1.5リットル
・ ザイル、登攀具類
・ アイゼン、プラブーツなど
水は、1人1.5リットルずつ持つことにした。明日は、シュラフや防寒具など寝るときに常に必要なものを上げるだけで済むはずだ。今日の重量は、1人17−18kg
 朝食のラーメンのねとねと感は4200mより増したように思うが、気にしないことにする。野菜の中で唯一残っている人参を入れて食べた。
 まずは、BCの北側にあるアメヒーノ山とアコンカグアのコルへと上がっていく。ガイドブックには、アメヒーノコルは迂回し左斜面を登るように、と書かれていたが、他パーティを見てもみんなコルへ向かっているようなので、我々もそちらへ進む。左斜面(南側)にもトレースはあるが、下り専用道のようで、あまり登りやすそうではない。
 ルートは砂と小石のつづら折りのアップ。足元は安定している。アメヒーノコル(5380m)には狭いキャンプサイトがあり、ここにテントを張っているパーティもあった。ここまで来ると、BCは遥か下の方に小さく見えるのみである。コルで左(南西)に進路を変え、アコンカグアポーランド氷河を目指す。ルート状況はほとんど変わらない。トレースは登り用と下り用があるので、歩きやすいところを探す。下りでよく使われる道は崩壊しやすく、登りにくい<★正面がアメヒーノコル><★アメヒーノコルからアコンカグア方面>
 5500mを過ぎるあたりで見えない(精神的)壁を感じた。急に苦しくなってきた。一歩一歩がとても重い。真剣に歩かないと前に進まない。気合いを入れる<★ひたすら高度を上げていく>
 休憩して、水や食糧を摂ると大分楽になった。気持ちの問題だったのだろうか。
 13時25分C1(5900m)に到着。苦しい闘いだった。風が吹きすさぶC1は、かなり寒い。顔面が凍り付きそうだ。さっさとテントを立てて下りたいと思うのだが、何かしようと身体を動かすだけで、息が切れる。そうかと言って、じっとしていると寒いのでどうしようもない。
 キャンプサイトには、氷河の下端からある程度下ったところある、広くなった部分が適している。しかし、そこでは氷河を目指す場合は少し遠く感じる。それ以外にも、氷河下部のペニテンテス周辺にいくつかある。なるべくなら、氷河に近い方が良いと考えたが、風除けの岩があって平らなところとなると、ほとんどの場所を他パーティに占められていた。テントは全部で15張りくらいあっただろうか。仕方がないので、少し斜めであるが、氷河近くの他よりは多少ましな場所を選んで設営する<★真ん中の黄色いテントが我々のC1><★右下のちっちゃいテントが我々のもの。左のほうにテント村。目指す氷河は反対側>
 C1からはポーランド氷河が良く見える<★氷河全景>。とうとうここまで来たという感じがする。あの氷河を登るためにここまで来たのだ。氷河には、あちこちにラインのようなものが入っていた。たくさんの人が登るからトレースができているのか、と思ったが、どうも全部クレバスらしい。ほとんど縦横無尽にラインが見えるということは、氷河上はクレバスだらけということではないか。どうやってあそこを突破するというのだろう。"Polish Glacier Route"は、氷河の左側を進んでいくのだが、そちら側はクレバスの巣。そこをクレバスを避けて進んでいったら、ずいぶんと遠回りをさせられそうだ。"Polish Glacier Route"を避けるとしたら、氷河右側を直上する"Polish Glacier Direct Route"を行くしかない。そちらならトレースも見えるし、登っているパーティもあるようだ。しかし、Normal(Polish Glacier Route)の方は、登っている人がいるように見えない。これは計画見直しの必要があるかもしれない。
 それに、このところの連日の晴天で、氷河がアイス状になっている可能性もある。遠目に見てもブルーアイスになっている部分が分かる。我々が持っているのはアイスバイルではなく縦走用のピッケル。これで登れるのだろうか。もしアイスだったら、確保用に持ってきたデッドマン(スノーアンカー)も意味を成さない。Directは傾斜が50度にもなる部分があり(Normalの最大斜度は40度)、我々の持っているギアの質量では少々不安だ。となると、方法としてはもう一つ。登頂後の下山路として利用しようと考えていた"Falso de los Polacos Route"だ。こちらのルートは完全に氷河を避けていくので、全く問題なく登れるだろう。しかし、それではノーマルルートで登るのと同じ事になってしまう。できることなら氷河に挑みたい。ここは迷うところだ。今日のところはBCに下山するが、明日再びC1に上がり、明後日試登した状況によって最終判断をしなければならないだろう。
 氷河を目の当たりにしたことによる、期待と不安を胸に抱きつつ、BCに降りる。下りは相変わらず早い。あっけないほどあっという間に下ってしまう。下りでは、アメヒーノコルは通過しなかった。トラバースするように、真っ直ぐBCへ降りていく。
 夕食の「Arroz Primavera」は昨日のパエリアと同じ種類。味はうす味で良く分からない。やはりパサパサ。「Sopa de Verduras」は野菜スープ。1リットル使用で4人前。野菜はフリーズドライで粒々バラバラになっており見た目はよくないが、味はまずまず。
 20時頃になってもアコンカグア方面に雲が流れている。今までにない状況だ。いつもなら、昼間に雲が出ても夕方には消えていたのに。


1月23日(日)快晴 <ベースキャンプ〜キャンプ1>【8日目】


7:00起床 気温―10℃ [脈拍64回/分]
7:00-9:00朝食(クノール「Sopa Facil(GALLINA味)」、人参1本、紅茶、砂糖)、出発準備
7:50日の出
9:00ベースキャンプ(5000m)出発3℃
10:10-10:20R1(Ameghino(アメヒーノ)コル5380m)3℃
11:05-11:15R2(5600m)3℃
12:00-12:10R3(5790m)3℃
12:25キャンプ1(5900m)着 3℃
12:25-12:50テント設営
13:05-13:25間食(紅茶、砂糖)
16:10-16:40水汲み −4℃
18:00-19:20夕食(α化米(白米)、ユッケジャンスープ(FD)、紅茶、砂糖)
※エスファイト各1錠、パンビタンハイ各3錠、ルルエース神谷3錠
19:30日の入 −8℃
20:50消灯
【行動3:25 実働2:55 水3.25リットル】


 朝は冷え込んだ。水はテント内に入れておいたが、一部分凍っていた。
 今日は再びC1へ行き、5900mで初めての宿泊となる。荷物は、宿泊用具類と食糧を二日分。登頂後の下山路にノーマルルートを選択する場合、C1にすべての装備を上げなくてはならない。それを考えると、こういう時を利用して少しずつでも持ち上げたほうが良いだろう。重量は16kgくらい。
 いつものことだが、歩き出しはどうしても辛い。たぶん、睡眠中に失われた水分を、朝食で補給し切っていないのが原因ではないかと思われる。のどが渇いてひりひりと痛む。昨日と同じく5500mで壁を感じ、急に苦しくなってきた。昨日は、水分と食糧を補給したら、だいぶ楽になったのだが、今日は水を飲んでも変化がない。何故だろうか。単純に考えれば、昨日より順化している分、楽になっていいはずなのに。10歩と続けて歩けないような状態だ。ゴール(C1)がどのあたりかは分かっているので、精神的には多少気楽ではあるのだが・・・。
 何とかC1に到着。西よりの風が非常に強く、大変冷たい。気温は3℃だが、体感的にはもっと低く感じられる。しかし、その風も周期的で、風が止むとほっとできる。昨日登ってきたときは、風対策のためにテントのポールを立てないで、中に荷物を詰め、上に石を置いてBCに下っていた。そこでポールを立ててテントを設営する。テント内は風が防げるというだけで別天地だ。風は強いが、天気は快晴。雲はほとんど見えない。
 体調はとても良い。行動中は苦しかったものの、C1に着いてテント内で休むと、ずいぶん楽になった。頭痛や気持ち悪さはない。でも、少し歩くだけでとても苦しい。単なる散歩をするのにも必死である。
 現在(13時頃)、二つのパーティが氷河上にいる。一つはDirectルート。もう一つはNormal(Polish Glacier)ルート。Normalを行くパーティがいるのが分かり少しほっとした。しかし、彼らは見ていても全然進んでいるように感じられない。遅々とした歩み。この時間であんなところにいて大丈夫なのだろうか。ひょっとすると今日は単なる偵察なのかもしれない。
 C1での水は、氷河上からペニテンテスを通って流れてくる沢を利用。浄水器を使おうとすると、凍ってしまって使い物にならなくなった。直接水筒に汲むと、砂が多く混じってしまうので、カップを使って少しずつ入れる(浄水器は、この時の使用が原因で壊れてしまい、このあと使えなくなってしまった)。
 夕食はα化米。日本から持ってきたものだ。1パック2食分を二人で分けた。ユッケジャンスープは固形のフリーズドライスープ。久々のまともな「ご飯」。米がこんなにおいしいとは思わなかった。
 ちなみに今日は私(神谷)の25回目の誕生日。5900mでこの日を迎えられるとは何と幸せなことだろうか。メンドーサから少しだけ持ってきたワインを飲んだ。明日は、大事な試登をしなくてはならない日なので、ほんの少しなめるくらいでとどめた。
 その後、睡眠導入剤として風邪薬のルルを飲んで寝た。効くかどうかはわからないが、この高度で寝られるかどうかでアタックのときもだいぶ違うだろうと思う。
 日暮れとともに強風はおさまったようだ。昼頃から夕方にかけてが一番風が強い時間帯のようである。


○ついに氷河へ足を踏み入れる・・・24日以降の記録を読む
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