「WHITEOUT」
監督:若松節朗 主演:織田裕二 原作、脚本:真保裕一 配給:東宝 2000年
快作である。原作のアレンジが絶妙で、刺激的。原作の良さを活かしつつ、オリジナルな部分もうまく配置され、展開が非常にスムーズである。小説でしか描けない部分、映像でしか見せられない部分、そこがうまくはまっている。さすがに、原作の真保裕一が脚本を手がけているだけのことはある。真保氏はそもそもアニメーションの専門学校を卒業し、一時期アニメのディレクターをやっていた人なので、映像と文章の表現の違いを良く理解しているのだろう。
映像的にも、雪の質感が良く出ていて、スクリーンの向こう側の寒さが伝わってくる。原作の、あの降りしきる雪の感じがそのまま表現されているようだ。実際の大雪の中で撮影されたというだけあり、セットやCGではない、本物の雪、本当の寒さがそこにあるように感じた。また、その雪もさることながら、織田裕二の演技がいい味を出している。「踊る大捜査線」に続き、彼は、再びはまり役を射止めたようだ。彼の「富樫」を見てしまうと、もう彼以外にはこの役ができる人間はいないのではないかとさえ思えてくる。かっこいいなあ、織田裕二。
さて、この映画を山ヤの目から見るとどうだろうか。そもそも原作からして、「山岳色」はそれほど強くはない。映画になっても、「雪」のイメージは鮮明に出ているが、、「山」という感じはあまりしない。映画の中の雪にも寒さにもリアリティは感じるが、そこにあるのは「恐ろしい雪山」のイメージだけである。苦しいんだけど、辛いんだけど、友との約束を守るために立ち向かわなくてはならない相手として「雪」がある、といった感じだ。もちろん、雪山の素晴らしさを表現するのがこの映画の目的ではないから、これで良いと思う。しかし、この映画を見た山を知らない人に「雪山に行く」と言ったら、「何で好き好んで、あんなところに行くの」と思うに違いないだろう。「雪山は怖いところ」というイメージを植え付けてしまう作品である。まあ、そんなことは気にせず、素直に楽しめる作品ではあるが。(原作小説の感想はこちら。漫画版の感想はこちら)
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