「ルートはどこだ」
谷川岳 幽ノ沢 V字状岩壁 右ルート

2001年10月21日(日)
メンバー:北村、神谷(記)



<6ピッチ目(幽ノ沢の紅葉と、はるか下のカールボーデン)>

V字状岩壁右ルートは、一度は行っておきたかったルートだ。
入門ルートというのは、一旦機を逃すと、なかなか登れないものである。私自身、一ノ倉の南稜も中央稜もまだ登っていない。今回は、本チャン4回目という北村さんと登るというチャンスが来た。こういうチャンスをうまく生かして行くのが大切だ。昨日に続いて再び幽ノ沢へ。易しいといわれているが、私も初めてなので、どうなるのかは分からない。気を引き締めていく。

昨日の正面フェイスと同じ所でギアを付けて、登攀準備。ロープをつけずにリッジを直上するが、どこから右へトラバースすればよいのか良く分からない。右のスラブを良く見ながら登っていくが、変なところから登りだすと、難しそうに見える。
予想していたところよりも大分上まで登って、中央壁の末端くらいまで行くとビレイ点があった。ここからのようだ。

幽ノ沢V字状岩壁 右ルート
1ピッチ目【神谷リード(以降全て)】
右俣リンネを越えてテラスへ。リンネのトラバースは、ある程度は支点もある。テラスに出てからその先が良く分からなかったので、とりあえずピッチを切る。

2ピッチ目
足元のボルトから、右下にクライムダウン<テラスからクライムダウン>。さらに右にトラバース。と、そこまでは支点があるが、その先が全くない。「要」と思われるビレイ点まで伸ばす。

3ピッチ目
ルートが判然としない。どこでも登れそうだが、あまり適当に登ると、行き詰まってしまいそうで怖い。後続パーティも続々と来た。先行パーティがあれば、それを見ながら登れて早いのだが、我々は一歩ずつを確かめながらなので、時間がかかる。あっという間に追いつかれる。

4ピッチ目
右上に岩壁が見える。ルート図を見てもそんな話は書いてない。支点につられて、岩壁基部まで行くが、近づくほどに厳しさが伝わってくる。まさかこんなところを登ることはないだろう。壁の直下にハーケンを見つけたが、すごく古い。少し引き返して、左へトラバースすると、固め打ちされたハーケンを発見。岩壁は、左から回り込むのが正解のようだ。
しかし、その固め打ちハーケン以降支点が全くない。目を皿のようにして探すが、あまりにも支点がないので、ルートを間違えているのではないかと不安になる。もっと右なのか左なのかと迷いつつ20mほどランナウト。ようやく見つけた2本並んだハーケンは、2本とも錆付いていて、とても信用できないので、ナイフブレードを1本打ち足す。

5ピッチ目

実は、そこから1段上がったところにボルトを含むちゃんとしたビレイ点があった。そこを通過して、左上ルンゼに入る。ここまでくれば、ルートが正しいことは明らかだ。ちょっとほっとする。ルンゼ内は、そこまでよりは支点が多いので安心<左上ルンゼ>。最後のフェイスのワンポイントが、IV-級と言えばそんな感じ。リッジに出て、ハーケン3つのビレイ点。

6ピッチ目
一応核心部。出だしのフェイスが、かぶり気味でムーブが嫌らしい。このルートの中では一番難しいかな、と思われる部分。それでもIV級あるかないかくらい。
それを乗越しても支点がないというのが、嫌な感じだ。
さらにチムニーへ。内部は濡れているが、外側を登れば快適。でも、やっぱり支点は少ないので、落ちることは許されない<草つき混じりの凹角>

7ピッチ目
出だし、左の草付バケツを行けば単なる歩きになりそうだが、あえてフェイスをトラバース。降り口がちょっと怖かった。
その先は潅木のヤブ。

8ピッチ目
ほとんど草付。支点はない。所々の潅木で適当に取る。ロープなくてもいいくらい。
広いテラスに出て終了。

技術的にはなんということもないルートだ。
ただ、ルートファインディングが難しい。ルート図と照らし合わせながら、支点の少ないフェイスを登っていくのは、なかなかに難しいことだ。
取付から始まって、ずっとルート図を見つめっぱなしだった。どこでも行けそうなだけに、よく分からない部分も多い。間違えたかな、と思った頃にピンが出てきたりする。
5ピッチ目のルンゼ状のところまでくると、そこから先はもう一本道だが、そこまでのスラブが初めてだと分かり難いと思う。

もちろんどこを登ったってよいのだろうが、ハマると怖いので、ルート図どおりに進みたい。ただ、それは本来の岩登りとは違うのかも、という気もする。決められたルートを決められた手順どおりに進み、ルート図が合っていた(間違っていた)ことを確かめるのが、クライミングではないだろう。
もともとは、壁を登るためにルートができたわけで、ルートのために壁があるわけではない。とはいえ、どんな岩が出てきたってそこを突破できるだけの実力が今の私にあるわけではなく、結局は、ルート図をいかに読み解くかということに、力を注ぐしかないのだが。今のところは。

このルートは、先行パーティがいたら、ただついていくだけになって物足りなさがあるかもしれないが、トップで取り付けば、それなりに楽しめる。今回はオールリードであったので、ルートファインディングの難しさが、特に実感できた。
技術的には易しいだけに、それ以外の部分で考えさせられ、そういう意味で楽しめるルートだった。




10月21日(日) 曇り 
3:10 起床
4:35 出発(一ノ倉出合)
4:55 幽ノ沢出合
6:00〜6:20 登攀準備
6:50 登攀開始【V字状岩壁右ルート】
〜7:35 1P目
〜8:00 2P目
〜8:30 3P目
〜8:45 4P目
〜9:00 5P目
〜9:20 6P目
〜9:30 7P目
〜9:45 終了点
10:00 終了点出発
10:20 稜線
12:30 一ノ倉出合


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