「さわやかな秋空の下で。」
錫杖岳 烏帽子岩前衛フェース 1ルンゼ(本流)ルート

2001年9月29日(土)
メンバー:石川、神谷(記)、(三堀、松浦、北村)



<結構悪い4ピッチ目>

9月29日 前衛フェース 1ルンゼ(本流)ルート

左方カンテの取付から顕著に見えるルンゼから取付こうとしたのだが、実はそこは「1ルンゼ左ルート」だと親切な方に教えられる。左方カンテの広場から右に結構下ったところが取付で、そこは広場からは見えない。ボルトとハーケンで3本の支点があった<1ルンゼルートの取付>
下部2ピッチは省略することも可能だが、素直にオリジナルルートを下から登ることにする。
1ピッチ目【神谷リード】
出だしは緊張する。そもそもここが本当に1ルンゼの取付で正しいのかが分からない。間違ったルートに取付いてしまって、進退窮まってしまったらどうにもならない。ともかく最初は慎重に進む。
ルンゼの左のフェース上に支点が続いている。これが1ルンゼルートだということは、間違いなさそうだ。しかし、やたらに残置支点が多い。これでもか、というくらい頻繁に出てくる。まだ身体が岩に慣れていないので、気分的には安心できるのだが、ちと多すぎないか。ビレイ点となりそうな場所も何ヶ所かある。3つくらいのビレイ点を通過して、40mと思われる地点でピッチを切る。
2ピッチ目【石川リード】
白山書房「日本の岩場」では、V級。山と渓谷社「アルパインクライミング」では、IV級・A1(VI-級)となっており、アブミがいるかどうか微妙なところ。出だしの3m垂壁が核心らしいが、見た目ではフリーで行けそうに感じる。見た目で楽そうでも、実際登ってみると結構嫌らしい、ということは往々にあり、やはりここも同じであった。フレーク上のクラックは、ホールドがカッチリ決まるのだが、出口の乗越の部分がちょっと難しい。目の前にぶら下がるテープシュリンゲの誘惑に耐えながら、強引に身体を持ち上げ、何とかフリーでクリア。その先は階段状のフェースとなる。
3ピッチ目【神谷リード】
2ピッチ目を結構伸ばしたためか、すぐ目の前にV字岩壁直下のビレイ点が見える。III級ほどの岩場をすいすいと進むと、意外にビレイ点は遠く、そこまでで25mを越えてしまった。次のピッチも「日本の岩場」と「アルパインクライミング」では差がある。前者は左上しており、後者は一旦左に下り気味のトラバースをしてピッチを切るようになっている。見た目にはどちらでも行けそうだが、ともかく先に進むことにする。
III級程度の岩場が続くが残置支点がほとんどない。左にトラバースしてみるが、ビレイ点となりそうな場所がないので、結構ランナウトして、ギリギリ(「日本の岩場」の)4ピッチ目の終了点らしきところに到着。
4ピッチ目【石川リード】
ここまで来て、先行パーティがいることに気づく。5ピッチ目の核心部で手間取っているようで、さっぱり進まない。どうしようもないので、この場でしばらく順番待ち。30分くらい待つ。このルートをさくっと終わらせて、2本目を登ろうかと思っていたが、この時点で諦めた。
ようやくフォローも核心の人工を登り始めたようなので、我々も先に進む。意外と悪いムーブが続く。IV+級はダテじゃない<意外と悪いフリー>
5ピッチ目【神谷リード】
核心部。ビレイ点から左上した地点にハーケンがあったので、直接登りだしたが、行き詰まる。一旦、ルンゼの直下までトラバースした方が楽。最初の2−3手はA0またはフリーでも行けそう。左側のテラスに移動してからが人工の本番。ハングまではなんということもないA1ルートだが、浅打ちのハーケンが多くて、カラビナをかけるとグラグラして今にも抜けそうだ。お助けシュリンゲもたくさんあるが、全く使う必要はない。中間支点を取るなら、シュリンゲかワイヤーでハーケンにタイオフしたほうが安心。
ハング下を左から越えてからがノーピンで怖い。人工が終わって、乗越してからトラバースしてビレイ点まで8−10mがフリーでランナウト。トラバースがちょっと怖かったので、途中キャメロット#0.5で中間支点とする<人工を終えて、フリーになる核心部>
6ピッチ目【石川リード】
この先、トポでは直上するようなことを書いてあるが、真上のチムニーは水が滴っており、どうにも登れそうにない(登りたくない)。先行パーティはカンテを左から越えていったようだ。オリジナルルートへのこだわりもあったが、ビレイ点の次の支点も見えないので、きっぱり諦めて、左に逃げることにする。(あとで、懸垂下降中に直上ルートを見てみたが、かなり悪そうな感じがした。たとえ乾いていても登れるかどうか・・。支点はあるのだが、そもそも最近登っている感じがない。)
カンテを越えると、広いスラブに出る。どこでも行けそうだが、ハーケンがところどころにあって、導いてくれる。ロープが屈曲しやすいので流れには注意。
この頃から陽が翳ってきて、風がとても冷たい。ビレイしていても登っていても非常に寒くなったので、上着を羽織る。
7ピッチ目【神谷リード】
チムニーがビレイ点の右と左の両方にある。右のチムニーは明らかにそれらしいが、ビレイ点からは一旦下ってから取付かなくてはならない。しかもジメジメして濡れている。左はチムニーというよりはただの凹角。先行パーティは左から行っている。我々もこのまま左のチムニー?を進む。
このピッチは楽しかった。パッと見、ホールドが分からないのだが、ちょっと探すとカッチリしたものが見つかる。それを掴んでグイグイと身体を持ち上げる。快適な登攀。「登っている」という実感。技術的には難しくないのだが、純粋に楽しい。凹角の突き当たりは、支点がなかったので、一旦左に出て、キャメロット#0.5をかませてから右へ。3mほど行くとビレイ点があって、横断バンドとなり終了。

同ルートを懸垂下降する。
50mロープをギリギリまで伸ばして下降するが、50mロープの長さによっては、支点まで届かないことがある(それも変な話だ。50mは50mのはずなのだが、メーカーによって長さが何故か異なるのも確かなのだ)。われわれも3回目の下降で、片方のロープが下まで届かずに危うい目にあった。末端はちゃんと結ぶことと、なるべく(ギリギリではなく)早めに下降点を切ったほうがよい(支点にできそうなポイントは随所にある)。
4ピッチ降りて、あと10mほどで取付だ、というところまで来て、懸垂ロープが途中で引っかかる。引っ張ろうが叩きつけようがどうにもならず、30mほど登り返し。
結局5ピッチで取付に到着。

17時に下山を開始したが、18時前には暗くなる。すっかり陽は落ちてしまったが、月明かりを頼りに下山した。暗い中での行動は、訓練を積むことによって慣れたりするのだろうか。上達すると、ヘッドランプなしでもある程度は物が見えるようになるのだろうか。そんなことを考えながら歩いていた。

一昨年初めて錫杖に来たときは、クライミングを始めてまだ半年。何も分からずにただただフォローでついて行くだけで必死であった。あれから2年。なんとか自分(たち)の力でひとつのルートを登れるようになったのは、うれしい限り。1ルンゼ自体は難しいルートではなかったが、前回よりも登攀を終えた時の実感が大きい。取付さえもわからないルートで(実際には前回来たときにも見ているので、忘れているだけなのだが)、ルート図と一つ一つ確認しながら登って行くというのは、難しいけれども充実する。
ルンゼとは言え、快適なフェースクライミングが多く、最後の凹角も楽しく登れた。前日まで雨だったので、ところどころ濡れているところもあったが、全般的にきれいなルートだった。浮石もないわけではないが、硬くてすっきりした良い岩だと感じた。

翌日、天候が悪化するのが分かっていたので、今回は1本のみだったが、魅力的なルートはいくつかあるので、また来たいと思う。
できれば、「注文の多い料理店」(VI+級)が登れるくらいのレベルに達したいのだが。

9月28日(金)
23:00 立川発

9月29日(土) 晴れ 
3:30 新穂高温泉駐車場着
5:30 起床
6:30 駐車場出発
8:40 左方カンテ取付着
9:30 登攀開始【1ルンゼ(本流)ルート】
〜10:05 1P
〜10:40 2P
〜11:05 3P
〜11:35 4P
〜13:00 5P
〜14:05 6P
〜14:40 7P(終了点)
16:45 1ルンゼ取付
17:05 下山開始
18:20 駐車場着

9月30日(日)
 
帰京


この記録に関するお問い合わせはこちらから。

[入口] [山記録]