<3.登山総括>   (記:三堀)


 今回の登山は、我々Team24にとっては、完璧だったと思う。
 振り返ってみると、自分達自身で企画し、情報収集、計画、実行と全て独力であり、技術的困難度は高くないにせよ、バリエイション・ルートからの登頂を成し、充実した遠征登山ができた。
  先ず、将来ヒマラヤ高所登山を目指すという志を同じくして結成されたTeam24の訓練山行のひとつとして、海外に目を向けてみた。アコンカグアは7000m近くあり、南米最高峰という魅力に加え、独自のアレンジが比較的容易にできそうなこと、入山料が安いこと、そして技術的に我々が余裕を持って登ることができそうなこと、そんな視点で選定してみた。登山ルートについては主に、「ACONCAGUA:A CLIMBIMG GUIDE 」(R.J.Secor著、英語)のガイド・ブックを参考にしたが、ここに『ノーマルルートは夏の入山者の7割が集中する』とあり、人が多いと惑わされて、自分達の登山を見失う可能性があるという考えから、ノーマルルートははずし、日本では経験できない「氷河」と、高所での雪上登山を実践するという目的で、北東面に落ちるPolish Glacierに決める。
  二名という小人数ゆえの自由を武器に登山活動を行うこととなるが、作戦として基本的には通常のC1(5000m)を我々のBCとし、Polish Glacier基部にあたる通常のC2に我々のC1を置くことにした。
 初めてC1予定地5900mに立ち、Polish Glacierを見上げた時、その迫力に気圧されたものの、後日、登高の可能性を見極めるべく、氷河上を6100mの高度まで試登した折、登高ルートも朧ろながら見えてきた。
 高度順化活動中、他の登山者からこれといってルート情報があったわけでもなく、全ての判断は我々自身で行うことになった。ガイドがいるわけじゃない。誰が頂上に連れていってくれるわけでもないのだ。
  高度順応を終え、体調は上々。いよいよアタックという前日辺りから、それまでの快晴の毎日から、雲が出やすくなる。悪天周期に入ったものと思われた。予定のアタックは中止し、一日天候の様子を見る。その悪天も終日というわけではなく、特に午後に崩れやすくなることを見て、予想し、翌日最も天候の安定する確率の高い夜から朝にかけての時間帯をねらってアタックを敢行することに決める。
 午前2時、C1から一気に山頂を目指した。予想は的中、晴れわたる山頂に午前9時55分に達し、ノーマルルートを経てC1へ戻る。とたんに雲が出て夕方雪となった。
  高度順化計画の段階から、最も登頂率の高い順化方法をノーマルルートの情報を参考に考え、アタックの時間帯と氷河登高ルートも我々で決め、安全にノーマルルートを経て下山する作戦をとった。幸運とか体力があったとかではない。これらは全て我々自身の選択と判断によるものであり、アタックは成功するという確信を持って出発した。ゆえに、登頂を成し遂げ、下山したときの充実感は大きかった。これこそ我々自身の登山だと思う。
 Polish Glacier Routeはノーマルルートに比べ、入山者は少ないものの、予想したより多くの隊が入っていた。ただ、我々の登山期間中、日本隊は見られなかった。



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