☆アコンカグアの気象の特徴(「ACONCAGUA:A CLIMBING GUIDE(P.38-42)」より要約)
アコンカグアはアルゼンチンに位置しているが、太平洋まで西にほんの150kmしかない。そのため、夏の間太平洋から吹く湿気の多い西風が悪天をもたらす。典型的なのは、この西風がアンデスの西斜面から上部に追いやられ、空気が冷やされて雲を作りだすことがある。これが「Viento Blanco(白い風)」として有名な強風のサインとなっている。この西風は、夏の間に凄まじい電気嵐を発生させることがある。「Vient Blanco」の徴候が見られたら、直ちに標高を下げる必要がある。
西からの雲の動きと風の流れは悪天の兆し、南からのそれは好天をもたらすと言ってよい。
プラサ・デ・ムーラスに駐在しているレンジャーは、チリからの天気予報をラジオで聞いており、アドバイスしてくれる。
しかし、夏の嵐はアコンカグアでは比較的まれであり、たいていは何日間も太陽が輝き続けていることが多い。
☆気象のまとめ
我々がアコンカグアに滞在した期間は17日間と非常に短く、一般的な気象条件を把握するわけにはいかなかったが、印象として感じたことを以下に列挙しておく。
・天気は周期的に変化する。
この時期のアコンカグアは好天の周期と悪天の周期がはっきりしているように思われた。好天が数日続いた後には悪天の周期に替わり、また数日間悪天が続きその後再び好天の周期に入る。
我々がちょうど入山した時は好天周期の真っ只中だったようだ。1月16日から24日までの9日間はほとんど雲一つない快晴であった。ただし、アコンカグアから見て東の方角(メンドーサ方面)には、午後になると雲が発生することが多かった。しかし、その雲はこちらには全く影響がなかった。25日の夕方東の雲は黒っぽくなり、下界では嵐になっているのではないかと思われた。26日は朝から突然の雲。今までになく低い雲がかかっており、この辺りから悪天の周期に入ったと思われる。
・午後になると雲が出る。
悪天の周期に入ったとしても、一日中天気が悪いわけではない。夜中、朝は快晴で、時間が経つにつれ雲が増えだすことが多かった。
悪天周期に入った26日は12:30から15:15まで雪が降った。27日は18:00から、28日16:00、29日14:00、30日15:30、31日15:30からそれぞれ雪が降り出した。いずれも1-2時間でやんでしまう。空気が乾燥しているためか、粒の小さいあられのような雪で、積もることはない。朝になって見ると、風に吹かれ飛んでいってしまっていることが多かった。
なお、深夜テントから出ることも何度かあったが、曇っていたことは一度もなかった。
・強風にも周期がある。
標高が高くなると風も強くなる。風に向かって歩けないほどの強さになることもあった。しかし、常に強く吹き続けるわけではなく、数分もしくは数十分といった周期で風が弱まる時が来る。
アタック日の朝、眠れないままに外の風の様子をチェックしていた記録がある。
1月27日22:30-35、23:05-10、23:35-40。この期間は、テントが揺さぶられるほどに風が吹いていた。だいたい30分おきに5分間、風は強まっていたようだ。この後、2:00からアタックを開始したのだが、その後はそれほど風は強くならなかった。
アルゼンチンの公用語はスペイン語である。日本人にとっては、スペイン語は馴染みが薄く、「英語なら何とかなるのだが」という人も多いと思う。ここでは、登山を行うにあたり、(スペイン語ではなく)英語がどの程度使えるのかをまとめておく。(なお、全て私の印象的なものであるので、一般的にどうであるかは別の問題である。)
1)空港
英語で問題なく利用できる。
2)タクシー
地元の人が多く、英語はあまり使えない。行き先が分かっていれば、目的地を告げるだけなので支障はないだろうが、登山や街の情報を聞き出すのは難しい。
3)ホテル
大きいホテルなら英語も使えるようである。我々が利用したユースホステル「CampoBase」は、従業員によっては英語の話せる人もいた。簡単な会話なら出来るので、ある程度の意志疎通は可能だった。
4)お店
現地市民が利用するような商店やスーパーでは、英語は難しい。観光客向けの土産物屋なら英語はしっかり通じる。
5)登山許可証
英語を話せるレンジャーがいるので問題なし。
6)ムーラ
我々が利用したムーラ管理者とは契約の際に、片言ながら英語も使えた。
7)登山者
欧米人が多く、むしろ英語の方が通じる場合が多い。情報交換には英語が役立つ。
8)現地レンジャー
プラサ・アルヘンティーナ常駐のレンジャーは英語で大丈夫だった。
アコンカグアの登山者は北米や欧州からの旅行者が多く、彼らが利用するものに関しては英語が可能であるようだ。しかし、英語が出来ても片言であることが多いので、スペイン語もなるべく勉強しておくことに越したことはない。
今回は、三堀がスペイン語をある程度使えたので、大変心強かった。