「ゆけ!砕氷船」
西上州 妙義沢の氷瀑 アイスクライミング
2006年2月5日(日)
メンバー:清野、神谷(記)
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<大滝一段目を登る>
ボートでアプローチするアイスクライミングエリアがあるという。 『岩と雪』114号には、 湖面の氷結状況によってボートで対岸に渡る。ダブル・アックスを含め、150mの氷床で下部が終わる。上部には、90mの氷瀑が待っている。この氷瀑取付の右には幅1m、高さ20m余の未踏の氷柱がある。おそらく難度の高い氷壁登攀技術が要求されるであろう。 とある。 『岳人』1999年11月号(629号)には、 アプローチはボートを利用。でも、かわいい白鳥型のボートに乗ってなんて、登攀意欲がなくなるかもしれない とある。 白鳥(スワン)ボートでアプローチ!? なんですか、それは。 しかし、現在、何かの工事中であり、貸し出し用のボートは使えないらしい。 ということで、自前のボートが登場。 トラックに乗せて、いざ出発。<★自前のボートをトラックに乗せて> 湖の対岸から見ると、ルンゼの途中に氷柱らしき白い筋が見える。90mの氷瀑という情報だが、そういわれてみれば、大氷柱にも見える。<★スワンの向こうに氷が見える(あれは大氷柱ではない)> これは期待できそうだ。 早速準備を始める。 まずは、トラックからボートを降ろし、湖に浮かべて……、と思ったが、池が氷結していて、ボートは浮かんでくれやしない。かなりの厚さがあるようで、ボートに二人が乗っても氷が割れる気配はない。<★お池におふねを浮かべたら> 湖岸から離れれば氷は薄くなるだろう、という期待を込めつつ、ザックを載せ、ヘルメットをかぶって、さあ出航! とはいえ、湖のど真ん中に突っこむ勇気はなく、繋留ブイを伝うように進路を定める。いざというときは、このブイを伝って戻ってこられるように。 が、さっぱり進まない。 アイゼンをつけて、後ろから押してみる。氷が厚いうちはこれで行けるが、いつ氷が割れるかわからない。オールは使いようがないし、身体を前後に揺すってみると、多少は前進してくれたが、進む距離はたかが知れている。 打つ手なしか、とあきらめかけたとき、そういえば、バイルを持っていることに気がついた。そうか、これを使えばいいんだ。 前に乗った私が、バイルを氷に突き立てて、ぐいと身体に引きつける。<★バイルで氷を割りながら> ボートが動いた。氷の上なので、二人が乗っていても、何とか動かすことは可能だ。 一度動き出せば、気持ちよく進む。 氷を割りながら、ボートはぐんぐん進んでいく。 北極圏を行く、どこかの探検隊か。 すすめ!砕氷船!<★すすめ!> あの氷瀑を目指して! 氷結した池。行く手の氷の上には、鳥(オシドリ?)がたたずんでいる。 近づくと、ぱあっと飛び立つ。 山の向こうから、陽が昇ってきた。 輝く湖面。進むボート。 遠くから見ていたら、幻想的で、美しい光景に見えるかもしれない。 ただ、実際、乗っている方は真剣だ。 片腕でバイルを打ち込み、二人分の体重と荷物を載せたボートを引きつける、というのは、思った以上に重労働だった。取り付く前に腕がパンプしてしまいそうで、休み休みでしか進めない。<★結構つかれる> しかし、ここで気を抜くことはできない。 湖面に突き刺さったバイルは、氷が割れるとともに、湖に沈んでしまう危険性がある。 それよりなにより、バランスを崩して、自分自身が湖に落っこちてしまうのが怖い。 休みながら、少しずつではあるが、着実に距離を伸ばしていった。 行程もそろそろ半分を過ぎ、上陸地点を見定める段階に入った。 と、そのとき。 「そこのボートの人、戻ってきなさーい」 えっ、と振り返ると、お巡りさんが立っていた。 なんでなんで? と思ったが、どうもボート持ち込み禁止の場所だったらしい。 管理人さん(たまたまいた工事の人?)が警察に連絡したようだ。 ボートの二人は顔を見合わせるが、警察が来ているのに、このまま無視するわけにもいかない。 断腸の思いで、岸に引き返す。 すでに氷は割れているので、帰りは普通に漕いでいくだけ進む。 引き返しながら振りむくと、我々が造ってきた航路が、しっかりと氷を割り、一筋のラインとなって続いていた。これもまた美しい光景。<★振り返れば航路> さて、岸に着くと、お巡りさんが待ちかまえていた。 なんだかんだと抵抗してみるが、管理人さんも、警察の人も、池の責任者ではないので、はっきりダメだ、とは言えず、さりとて見逃すわけにもいかないという、複雑な立場。<★ボートは断念> ボートがダメなら、凍った池を歩いて渡ればいいのか! と考えてみるが、いつ割れるか判らないような池に足を踏み入れる勇気はない。 さて、と……。 (アプローチの過程は省略しますが、ボートの運航休止は、今シーズンのみのようなので、妙義沢の氷を登りたい方は、来シーズン以降、素直にスワンボートを借りるのがベストです。 また、後日知ったことですが、オシドリ保護のために、冬期は妙義湖に入らないように、という話もあるようです。くれぐれもご注意ください。) 出合に着くと、ナメ滝が続いていた。<★出合のナメ滝><★後ろは湖> とりあえず、身支度を調える。 目指すは、90mの大滝。そこまでは単なるアプローチ。<★ナメ滝が続く> 途中一箇所ロープを出したが、どんどんと登っていく。<★ここでロープを出す> 氷は最初のナメ滝(30mくらい)だけで、あとは落ち葉の上を歩くだけ。 チョックストンを左から越え、歩くこと、30-40分。 ついに大滝に到着した。<★大滝?><★近寄ってみる> 90m、というのはさすがに大げさか。 一段目がもっとも傾斜が強く35m。(IV+くらい) 二段目が40m(IVくらい) 三段目は25m(ロープ不要) 全部合わせれば、確かにだいたい90mくらいだろうか。 一段目をリードしたが、わりと面白かった。<★一段目出だし> 適度に硬い氷で、バイルの入りも良い。 傾斜は強いものの、足の置き場が多いので、スクリューのセットには困らない。 上部で右上ぎみに登っていき、灌木でビレイ。<★上部は右へ> 二段目は傾斜も緩い。 ロープはいらないかも、という微妙なところだったが、念のためにそのままロープを出す。<★一応ロープを出す><★傾斜は緩い> 三段目はおまけみたいなもの。ロープを引きずって登る。<★オマケみたいな三段目> せっかくなので、このまま稜線まで登ることにする。<★もう湖が遠い> ギアなどは置いて、行動食や水を持って、20分ほどで表妙義の稜線に出た。 ケモノ道なのだろうか、きれいな踏み跡が稜線までずっと続いていた。 稜線から、とくに大展望が開ける、というわけではなかったが、表妙義の主稜線に出られたことで達成感を感じることはできた。 遠目から見た“大氷柱”という印象とは、ちょっと異なっていたが、ボートを使ってのアプローチ(失敗したが)は、(いろいろな意味で)忘れられないものとなった。 なお、「幅1m、高さ20mの未踏の氷柱」というのは、見あたらなかった。あまりちゃんと見ていないが、枝沢の奥の方なのかもしれない。 こういう、 「あそこに氷らしきものがある」 「ひょっとしたら、未登のすごい氷瀑かも」 「ともかく行ってみよう!」 というのは、なかなか楽しい。 氷自体が期待はずれのものであっても、そこまでの過程が楽しめる。ほかにはない「わくわく感」がある。 人気ルートに行って、確実に登れる氷と戯れるのももちろん楽しいが、こういうクライミングもまた別の歓びを感じられるものだ。 |
2月5日(日) 晴れ
9:20 出航(14℃)
9:50 帰港(13℃)
10:45 妙義沢出合(7℃)
11:30 大滝取付(0℃)
12:50 大滝終了(-2℃)
13:15-13:30 稜線(-1℃)
14:35 出合(2℃)
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