「丹沢の大滝」
西丹沢 中川川 西沢・下棚沢「下棚」、本棚沢「涸棚」(沢登り)

2002年10月27日(日)
メンバー:木下、大田、森(以上JAC青年部)、神谷(記)
報告内の★マークは、写真へのリンクです。



<下棚を登る。>

西沢・下棚沢 下棚 40m IV+、A0
朝イチからこれですか。
ちょっと哀しくなった。
アプローチが短くて良いのだけれど、ハイキング道を30分歩いただけで、F1(下棚)からいきなり40m大滝とは。
心の準備もできていないし、身体をほぐす余裕すらない。

見上げるほどの大滝がそびえている。当然ながら、滝には水が流れていて、岩は全面的に濡れている。しかも、ルート取りを考えると、シャワークライミングになりそうな感じ。今期2回目の沢にしては厳しすぎる気がする(しかも前回から5ヶ月も経ってるし)。

尻込みしてるのは自分だけかと思ったが、他の人達もあんまり登りたそうではない。今回のメンバーは、みんな沢ヤさんばかり。バリバリに沢をやってる人でも、この滝は厳しそうに見えるのか、とそんなことで安心する。

積極的にリードしたいって人がいなかったので、結局ジャンケンで決めることに。
…絶対負けられない。

かろうじて、リードを免れ、フォローで高みの見物。

リードの太田さんは、出だしから厳しそうにしている。A0も使いつつ、IV級とは思えないムーブの連続。中間部では、シャワーを浴びながら、行きつ戻りつしている。さらに後半は、7-8mくらいのランナウトが続いている。
…ジャンケンに勝って良かった。

で、実際フォローで登ってみる。
下部はホールドも豊富で、思ったより楽にぐいぐい身体を持ち上げられる。中間部のトラバースは、一歩が踏み出せず、残置スリングでA0<★中間部のトラバース>。その後、水流際に近づくと、容赦なく水が身体を叩きつける。太陽が出ているとは言え、10月も後半となれば、やっぱり寒い。雨具を着ていても、首もとから袖口から水が入り身体を濡らす。冷たいシャワーを浴びながらでは、ムーブを考える余裕がなくなってくる。じっくり考えてると、どんどん身体が冷えてきてしまう。
一旦、水を浴びてしまったら、あとはただ夢中。
なるべくフリーで、などという考えは吹っ飛んだ。残置がたくさんあるのに助けられ、A0に次ぐA0。残置スリングもたくさんある。
もう何も考えられない。とにかく、早く上に登らなきゃ。<★シャワーを浴びつつ>

夢中で登っていると、いつの間にか落ち口に着いていた。

リードで、ランナウトしたのは、途中でギアが足りなくなりそうだったからだそうだ。実際、支点は、十分すぎるほどあった。

しかし、朝イチからこれは、手厳しい。
今回は、滝登りがメインなので、この先の沢は遡行しない。
懸垂で戻って、本棚沢へ。



一旦沢を引き返し、二俣のところから、本棚沢へ入る。
10分後、本棚F1(70m)到着。

目を疑うような偉容。
暗くて黒くて威圧感がある。
ハイキング客が大勢いる。
これは、登る対象ではなく、見て「ああすごいねー」と言って、楽しむものだよなあ、と思う。

近づいてみる。
下部は傾斜が緩くてなんとかなりそうだが、上部があまりにも、あまりにも。
トポを見ると、一旦水流に近づいて、そこからスラブを右上するらしい。しかし、そのスラブも、今はかなりの水流があって、登れる気がしない。もちろん、リードする気はさらさらない。やはり、昨日の雨で今日は水量が多いのか。

皆さん同じ意見のようで、次回の課題、ということにして、今回は本棚はパス<★これを登るのか……?>

隣の「涸棚」を登ることに。
こっちも厳しそうだが、本棚よりはましか。

またしてもジャンケン。勝った順番に何番目に登るかを決める。
涸棚のトポは、一般的な沢登りルート図集にはなく、「日本登山大系」が手持ちの唯一の資料。
そこには、「ルートは滝心にとるが、中段が特に悪い」とだけしか書いていない。
中段は是非避けたい。
さりとて、一段目は見るからに厳しそう。かと言って、落差120mあるという涸棚の二段目以降は、ここからでは見えず、判断のしようがない。ということで、ごくごく消極的に四番手を選ぶ。

西沢・本棚沢 涸棚 120m? IV?
一段目は、森さんがトップ。
水流の右側から登り出す<★右から取り付いて>。意外に残置ハーケンがあるようだが、やっぱり厳しそう。エイリアン(赤)も使いつつ、A0の連続で、上部へ。上の釜の手前に、ビレイ点があり、そこでピッチを切る<★残置はあるものの><★ここでピッチを切って>

フォローがダブルロープで登り、バックロープを一本引いて、それをFIX。三番手と四番手はFIXをユマーリング。ユマーリングしている間に、二番手が出発、という作戦。
二番手の木下は、ビレイ点から水流沿いの滝の直登を避け、右手のヤブを高巻き。水流沿いはもろくて登れないとのこと。
しかし、ここのビレイ点は、水流のすぐ脇で、ビレイしていると、身体半分が濡れるような嫌な場所。長居はしたくないのだが、リードはなかなかのびてくれない。ぐるっとヤブを高巻いて、F2下の釜の上の灌木でビレイ。

三番手は太田さん。
しかし、F2も見るからにつるつるの壁で、登れそうではなく、結局右からヤブ高巻き
F3下へ。

2ピッチもヤブを漕いで、「何やってんだろか」という気分になる。
さあ、ようやく私の出番か、とF3下のビレイ点に到達したが、F3はさらに悪く、とてもじゃないが登る気になれない。じっくり観察してみるが、残置支点も見あたらず、少なくとも私にはリードできない。
じゃあ高巻くか、ということになるが、これを高巻いて、上に何かがあるのか、というと、そうでもない。F4の様子がここからも見えるが、別に大したことのなさそうな小さな滝だ。あれを登るために、さらにヤブを漕ぐのか、と思うとうんざり。

滝を登りに来たんだか、ヤブ漕ぎに来たんだかよく分からなくなってきた。
滝を登らない(登れない)んなら、このまま詰めていっても意味はない。

全員一致「もういいや」ってことで、下降に入る。下降用の支点はあったので、スリングを残置して、2ピッチで取付へ。

結局、ちゃんと登ったのは、下棚沢F1だけだった。
涸棚F1はユマーリングだったし、あとはヤブ漕ぎ。
本棚沢の大滝が登れなかったのも、涸棚のF2以降が登れなかったのも、実力不足かな、と思うものの、じゃあ今度はがんばって登れるようになりたい、とも思えない
乾いていて、フラットソールで登れる壁には、登攀意欲がわいてくるのだが、濡れていると、さっぱり気持ちがのらない。
怖い、滑るっていうイメージが先行する。今回も、とにかく無事帰ってこられて良かったな、という感じだ。

沢登りそのものは嫌いじゃないんだけど、濡れた壁を沢靴で登るっていう滝の登攀はどうもなあ。とは言え、ただ歩くだけの沢登りというのもあまりそそられないんだけれども。

やっぱり乾いている壁の方がいいなー。



10月27日(日) 晴れ

7:00 西丹沢自然教室駐車場発
7:35 下棚取付着
8:30 登攀開始【下棚】
10:15 登攀終了
10:30 本棚取付着
11:30 登攀開始【涸棚】
14:50 登攀終了
15:50 駐車場着



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