「崩壊寸前?」
神津牧場氷瀑群 アイスクライミング

2002年2月23日(土)
メンバー:榎本、道家、石原(YCC)、神谷(記)
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シャイアン&アパッチ
<シャイアン(左)とアパッチ(右)>

2月23日(土)
 2月だというのに、暖かい日が続く。
 先日は、東京で4月上旬並みの陽気になったとか。
 寒いのが苦手な私にとっては、朝晩の冷え込みが緩むのはうれしいことなのだが、
 山のことを考えると、雪や氷が融けてしまうんじゃないかと気が気じゃない。
 下界にいても、春が近いことを感じられる今日この頃。

 神津牧場は、西上州にある。白山書房「アイスクライミング」には、
 「20、40m含め、6本の氷瀑。」と一言だけ紹介されている。
 岳人1999年11月号(No.629)には「西上州の氷瀑ガイド」として詳しく出ている。
 私は全く知らなかったのだが、講習会なども行われる人気のゲレンデらしい。

 神津牧場への林道の途中の広場で車を止め、幕営。
 翌朝、少し戻ってトレースをたどる。林道から5分くらいは雪がうっすらあって、トレースをたどれるが、その先は雪が消える。踏み跡があるが分かりづらい。ガレた沢を下り、本流に出る。本流に出たところには、氷瀑の案内板があり、ここを多くの人が訪れていることを物語っている。

 本流から左の沢に入り、左エリア「インディアンサマー広場」を目指す。
 「インディアンサマー広場」付近には、手前から「チェロキー」「アパッチ」「シャイアン」「リトル・インディアン」と四つの氷瀑が紹介されている。
 遠目から氷が見え、よし登るぞ、と喜んで近づいてみるが、詳細が見え出してがっくりくる。すでに氷はやせ細り、氷瀑としては末期を迎えているような状態だ。到着した9時の時点で2℃。やはりこの気温の高さでは無理があるか。
 チェロキーとリトル・インディアンは問題外。あまりにも細くて登れる状態ではない。シャイアンも一応下まで繋がってはいるが、今にもはがれそう。唯一アパッチのみが可能性を残している。20mほどの大きさがあり、傾斜の強い部分もある。発達していたら、さぞかし立派だろうな、と思う。だが、この状況では……。スクリューが効くかどうか分からないし、氷全体が崩壊する危険性もある。無理をせず、ここはトップロープで登ることにする。<★チェロキー><★アパッチ(右)&シャイアン(左)><★リトル・インディアン
 リトル・インディアンのさらに左から回り込んで、トップロープをセット。50mロープでギリギリ届く。

 石原さん、榎本さんの順で登り、私の番。<★アパッチ上部の石原さん
 出だしには、もともと薄いベルグラが張っていたが、二人登って、すっかり落ちてしまった。仕方がないのでミックスクライミング。わずかに残っている氷にバイルを引っ掛けて、岩のくぼみにアイゼンを押し付ける。トップロープだからできるけど、リードだったら怖いだろう。
 上部氷柱を右から回りこむ。ある程度氷は残っているが、思い切りたたくと崩壊しそうなので、手首のスナップのみで軽くバイルの先を氷に引っ掛ける。刺さった角度がちょっとでも変わるとバイルがすべるので、角度を変えないように慎重に身体を持ち上げる。アイゼンもあまり蹴りこまないように。難しく、怖いのだが、ちょっとでも引っ掛かっていれば、結構大丈夫なのだな、という感覚が分かった。気をつけていれば、そんな簡単にすっぽ抜けるわけではなさそうだ。しかし、それをリードでできるかどうかは疑問だ。その引っ掛かっただけの状態で、スクリューのセットができるようになるには、まだまだ練習が必要だと感じた。

 だんだん、気温があがってきた。4-5℃くらいになり、氷瀑の裏側では、ジャージャー水が流れ始めている。最上部周辺は、叩くとボコボコと嫌な音がしていた。
 石原さん、神谷がもう一回ずつ登り、これ以上は危険と判断して、終了とした。

 このまま終わったんじゃ、あまりにももったいないので、本流に戻って、右エリア「入門砦の滝」へ。ここは凍っている。荷物を置いて、軽く越える。<★入門砦の滝
 登りきると、左手に「ナバホ」が見える。立派そうだ。よし、あれなら行けそうだ、と駆け出すように近づくが……。
 近づくほどに、登攀は絶望的に見えた。下部は何とか登れそうだが、上部がまるで駄目だ。裏側が空洞化しており、大量に水が流れている。慎重に行けば、あるいは、という可能性もなくはないが、そんな賭けに出てまで登りたいと思える氷ではない。<★ナバホ
 すでにシーズンは終わったのだ。おとなしく引き下がるのが賢明だ。
 右の「コマンチ」は遠目からでもボロボロだ。近づくこともなく、下降。

 このくらいの標高では、もうアイスクライミングのシーズンは終わってしまったようだ。今年は、冬の訪れが早く、氷結が早まった分、終わりも早いのかもしれない。物寂しい気分。またあと10ヶ月近く待たなくてはならないのか。名残惜しく、バイルを氷に打ち込んで、ぶら下がってみたりする。こんな感覚ともしばらくお別れか。
 来シーズンはどこに行こうか、あそこもここも、思いは果てない。

 予想外に早く終わってしまったので、神津牧場に行ってみる。動物たちもほとんど小屋の中で、牛がちょっと草を食べているくらい。夏はともかく冬はさびしいところだ。硬く凍りついたアイスクリームをかじりながら、雪解けの水が流れる音を聞く。

 荒船の湯でゆっくり体を休ませて、焼肉を食べて帰る。
 春は近いことを感じさせた、ある意味贅沢な一日ではあった。

 神津牧場は近いし、アプローチも短い。発達していれば登り甲斐のありそうな氷のように見えた。ただ、シーズン中は人も多く、講習会でトップロープを張りっぱなしという話も聞いた。時季を見計らって、また今度来てみたいと思う。




2月23日(土) 晴れ 2℃〜5℃(日中)
23:30 新座駅発
1:30 幕営地
7:00 起床
8:30 出発
9:00 インディアンサマー広場
11:30 入門砦の滝
12:15 下降開始
13:15 車



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