「ナチュプロ、A0、そして敗退」
瑞牆山 十一面岩正面壁 ベルジュエール(敗退)

2001年6月3日(日)
メンバー:羽矢(山岳同人カルパッチョ)、村野、神谷(記)


大フレーク
<大フレークを豪快に越える>
1P目:A1(村野リード)
 先行パーティは、二人組と三人組。2パーティともオリジナルラインを進んでいたが、我々はその左のカンテの裏側から取り付く。ベルジュエールはこれで10回目という羽矢さんによると、どうせ人工登攀で行くならこっちのほうが面白い、とのこと。2P目の途中からオリジナルラインと合流する。
 ザックを取り付きにデポ。ギアと下降用の靴だけ持ってスタート。
 村野さんリード。一本目のピンが少し遠いので、念のために下部にキャメロットを極める。
 あぶみの架け替えの人工登攀。ただ、三本目のピンが少し遠いようだ。しかもかぶり気味で、あぶみ最上段へ立ちこむことが難しいらしい。リードの村野さんはやたらに苦労していた。いきなり敗退かと思ったが、フィフィを使いつつ、思い切り手を伸ばして何とかヌンチャクをセット。先に進んでいった。
 ハングを右から抜けてビレイ点。このハングを右から超える
 フォローは快適さくさく。A1の単純なあぶみの架け替え。
 ビレイ点であぶみを投げ捨てる。この先人工登攀はないので、三人分をまとめて、岩壁の下に落とした。右側の広葉樹のほうに投げ落とせば、後の回収も楽。

2P目:5.9(神谷リード)
 フェースを2手分直上、そこから右のオリジナルラインへトラバースして、凹角を登る。凹角は最後まで詰めるのではなく、途中から右側のカンテへ移る。
 もちろんフリーで行こうと思っていた。A0なんて使う気はさらさらなかった。
 しかしその気持ちとは裏腹に身体はいつのまにかヌンチャクを掴んでしまう。トラバースは怖い。斜度はないし、フリクションは良く効くのだけど、カッチリしたホールドがないというのはやっぱり怖い。ヌンチャクの誘惑に負けてしまう。何とかトラバースを終えて、凹角へ。この先はピンも十分にあるので、安心してレイバックなどを使いながら、ビレイ点まで伸ばす。
 先行パーティが詰まっているので、3P目の出だしより一段手前の立ち木でビレイ。
 フォローが登ってくる頃には先行パーティは進んでいたので、フォローの二人にはそのまま3P目の出だしまで行ってもらう。。

3P目:IV+(神谷リード)

 薄いフレークがあるスラブ。出だしのピンはやけに遠いが、今にも割れそうなフレークも慎重につかめばカッチリ効いてくれるので、何とか進める。通常このピッチは、クラックの手前まで伸ばすのだが、半分くらいのところの立ち木で一旦切る。

4P目:IV+(村野リード)

 出だしは凹角を行く。途中から泥の詰まったコーナークラック。
 コーナークラックは、キャメロットをバシバシきめて登っていた。本来は、右のフェースに出てそちらを登るようだが、村野さんは、まっすぐにコーナーを進んだらしい。最後は左の壁に移って、倒木を乗り越えて終了。

5P目:5.10a(神谷リード)

 きれいな垂直のクラックを登る。全てナチュプロ。
 ナチュプロにもクラックにも慣れていない私は非常に苦労した。下部は、足がクラックに入り安定するが、上部に行くとクラックが狭くなり、足が入らない。手でジャミングをきめるものの、足は細かいフェースに立っているので、どうにも落ち着かない。大丈夫だ大丈夫だと言い聞かせるのだが、足は勝手にミシンを踏み出して、ますます安定しない。A0&A0で、一手ずつしか進めない。明らかに経験不足。時間ばかりが過ぎていく。
 途中にフレンズの残置があり、よく効いていた。
 何とかかんとかクラックを抜ける。かぶっている大岩を右から越えると「白熊のコル」。白熊のコルは広くて暖かくてゆっくり休める。

6P目:5.10a(羽矢リード)
 圧倒されるような大フレーク。中間にハーケンが一本あるが、あとはナチュプロ。さっきの5P目のクラックの登りを考えると、私にはちょっとリードできるようには思えない。
 村野さんが果敢にリードにチャレンジするが、キャメロットを一本極めただけで下りてきた。最初のキャメロットをきめて下りる
 そこで羽矢さん登場。キャメロットの4番5番を使いつつ、あっさりと、あっけなく、余裕で、するするとリードしてしまった大フレークを越える!1><。見ているだけならとても簡単そうに感じる。
 村野さんがセカンド再チャレンジ。中間のハーケンまでは何とか進むが、そこから先がどうしても進めない。テンション、A0、即席あぶみなどといろいろな手を使ってみるが、すでに腕の力も脚の力もなくなり、身体が持ち上がらないようだパンプした腕でがんばるが…。やむなく敗退。
 すでに、ここから下降するのはほぼ決定だが、私も登ってみる。下部だってそんなに易しいわけじゃない。オフウィズス、レイバック、ハンドジャム。私のクライミング経験の中では、あまり使わないテクニックを駆使しないと登れない。リードだったらキャメロットをきめながら登るんだから、ほとんど余裕はないだろう。そして大フレークのレイバック。腕があっという間にパンプしてしまう。これは腕力勝負なのか。この状況で、キャメロットをきめる余裕は全くない。それどころか上まで登る余力がない。どうにもならず、リードが残したキャメロットでA0。
 腕の回復を待ち、何とか大フレークを抜け、そこから懸垂下降。

 白熊のコルからは歩いて下れる。
 失意の中、取り付きまで戻る。

 敗退の直接の原因は、村野さんが力尽きていて、大フレークをどうにも登れなかったことだが、あのピッチを自分でリードできる自信がないという時点で、自分自身の力不足を感じており、敗退も止むなしという気分である。
 クラック&ナチュプロでのリードの経験がほとんどないのが痛かった。明らかに練習不足である。ただピンにヌンチャクをかけるだけではなく、クラックの幅を見て、必要なキャメロットの大きさを判断し、それを取り出して、セットして、ロープをかける。慣れていないために、その一連の動作をするだけで、力を消耗してしまう。キャメロットをセットしようとしたが、大きさを間違えてやり直し、となったときには最悪である。体勢が悪い状態の場合には、そんなに何度もやり直しをする余裕はない。一度で決める判断力を養わなくてはならない。
 それに、まだ自分のセットしたキャメロットが本当に決まっているのか不安があるので、ついつい何本も続けてセットしたくなる。手持ちのキャメロットには限りがあるので、ある程度の距離をもってセットしなくてはならない。そこもまたうまくできない。

 クラックはまだまだ。
 もっと力をつけて出直したいと思う。

大フレークが分かりますか?><植樹祭会場から瑞牆山


6月3日(日) 快晴

5:00 起床(グリーンロッジにて駐車、幕営)
5:50 出発
7:10 取り付き到着
7:35 登り出し
〜8:35 1P目
〜9:25 2、3P目
〜10:05 4P目
〜10:40 5P目(白熊のコル)
11:35 懸垂下降
11:55 白熊のコル発
12:10 取り付きに戻る
12:35 下山
13:45 車着


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