「待望・熱望・念願のアイス!!」
八ヶ岳 南沢大滝/大同心大滝沢(アイスクライミング)
2000年12月16日(土)〜17日(日)
メンバー:菅原、神谷(記)
一昨年同流山岳会に入会してはじめて行ったのが、八ヶ岳のジョーゴ沢アイスクライミングだった。生まれて初めてのアイスクライミング。自分の腕で足で力で垂直の氷を登っていくのは純粋に楽しく、心踊る体験であった。 翌日裏同心ルンゼへ。翌々週に戸台赤河原「舞姫の滝」、「戸台川本谷F1」を登った。そして3月に入り八ヶ岳大同心大滝を登り、その年のアイスのシーズンは幕を下ろした。 アイスの楽しさに魅了された私は、翌シーズンがやってくるのを待ち望んだ。 そして、昨年。待ち望んでいた割に、アイスとしては冬合宿の「広河原沢3ルンゼ」しか出来なかった。アコンカグアに行ったりといろんな事情があったのだが、残念な結果だった。 季節は巡って、あれから1年。再びアイスの時期がやってきた。今年は登るぞ、登りまくってやる!とシーズン前から気合だけは十分に、寒くなり滝が凍る日を待っていた。
<行動の概要> 急行アルプス→始発バスを乗り継いで、美濃戸口へ。まずは南沢大滝を目指す。 美濃戸山荘から南沢を進み、50分ほど行った所で右の沢に入る。5分も歩くと右手に「小滝」が見えてくる。小滝とは言うものの立派な滝である。 先行に女性二人組がおり、小滝左側をトップロープで登っている。我々はルートを滝中央に取り、菅原さんがリード。続いて私がフォロー。バイルを打ち込む、アイゼンを蹴り込む、体を持ち上げる。この1年ぶりの感触。身体がゾクゾクしてくる。全身をフルに利用して登っているというこの感覚がたまらない。 が、氷自体は完全には氷結しておらず、水がタラタラと流れている。彼女達が登っている左側はマシなようだが、中央・右は水っぽい。登るのに時間をかけてもいられないのでさっさと登ってトップロープをセット。菅原さんと交代で右側と左側をトップロープで登る。 ビレイをしているとザイルを伝って水が流れてくる。そのためザイルはびしょびしょだ。このことが後に大変な事態を引き起こすのだが、今はまだ何も気づかない。 計3回登ったところで、小滝を終了。一旦戻って、左手に進み、大滝へ向かう。 大滝は予想以上に大きく立派な滝。こちらはちゃんと氷結しているようだ。下部左側にビレイ用ハーケンが打ってあるので、そこからスタート。右は薄いツララ状なので左から菅原さんがリードする。 人が登っているのを見て、アイスクライミングほど美しいと思えるスタイルはないのではないかと思う。確かにフリークライミングも自分の力だけで登っているのでシンプルで良いのだが、ムーブが複雑になってくると、「すごい」と感心はするけど感動はしない。アイスは、何もない垂直の壁を真直ぐに直登していけるのが、なんとも豪快で、見ているだけで心を動かされる。真っ白な壁を少しずつだが確実に上昇していく様は、思わず感動を呼び起こす。菅原さんの動きに一瞬見とれた。 さて、私が登る番が来た。最初の20mくらいは、傾斜もそれほどではなくまずまず楽しく登れた。しかし、ラスト5mはほとんど垂直。緊張するし腕の疲労も早い。途中でどうしても腕がもたなくなり、反則技(フィフィ)を使ってしまう。(自分に)負けた気分。 上部に抜けてからトップロープをセット。懸垂で下り、氷が脆くてリードでは怖そうな滝の右側をトップロープで登る。この頃にはさっき小滝で濡れたザイルが凍り出してきた。ザイルが流れてくれないので、ビレイが大変。ATCにザイルを押し込んでやらないと動かない。この日はまだ良かったが、一夜明けた翌日には、完全に針金状に凍ってしまい、8の字に結ぶことも、ATCにはめ込むことすら困難な状態に。ビレイとしては全く使える状態ではなかった。 脆い氷に苦しめられ、バイルが外れてテンションをかけつつも、大滝右側もなんとか登り切る。 その日は、小滝の下の平らなところでテントを張って就寝。夕方から夜にかけて少し降雪があるも積もるほどではなく、朝にはやんでいた。
翌日は大同心大滝へ。一度美濃戸山荘まで戻り、不要な装備を置いて大同心沢へ向かう。途中で羽矢さん碓井さんと会い挨拶する。 時間が遅かったこともあり、大滝は大混雑。1パーティが登っているところに2パーティが順番待ち。さらにトップロープで別パーティが登っている。仕方がない。待つしかなかろう。 大同心大滝と言えば、一昨年、同流前代表岩瀬さんが思い入れたっぷりにリードしたところだ。その時は、人もおらず、滝の美しさと荘厳さに感動したけれど、今回は人も多いし、滝も未発達。しかも多くの人が登っているので、足場がすでに出来ているような状態。何だかあのときの思い出が、踏みにじられたと言うか、汚されてしまったと言うか、そんな気分。(勝手な思いこみに過ぎないのだが)ちょっとショックを受けた。 昨日濡らしてしまった影響で、ザイルが一本使用できない。やむなく9mmシングルで菅原さんリード。途中アイススクリューを打てないのか打たないのか、40mの間に2本しか中間支点がないという怖い状態に。ちょっとでも落ちたらグランドフォールは確実で、ビレイしているこっちが緊張した。 その後フォローで登ったが、一昨年のときのような恐ろしいほどの緊張感はなく、確かにラストの10m垂壁は怖かったけれど、それなりに楽しみつつ、登ることが出来た。 使えないほうのザイルも懸垂下降の為引っ張りあげ、2ピッチの下降で、下まで降りた。
<技術的な話> (1)エーデルワイスストラトス:ザイル。防水は完全なドライロープなのだが、1年半使用するとさすがに効果は落ちている。今回はほとんど新品の同種ザイルと同様の使い方をしたのだが、差は歴然。水のしたたる南沢小滝で濡らしてしまい、翌日は凍りつき、曲げることすら困難。新しいほうのザイルは、凍ってはいたが十分使える範囲であった。古いほうは冬場はもう使い物にならないと思った。 (2)シャルレグレードエイト:アイゼン。縦爪アイゼンを氷で使用したのは、今回が初めて。確かに刺さりは良いのだが、あまりにも刺さってしまって、逆に信用できない感じがした。体重を乗せるのが怖い。確かに入りにくいけれど、横爪のほうが安定するので安心できる。何度も使っていくうちに慣れていくものだろうが。 (3)カジタスペシャリトマークツー:バイル。コブの向こう側に打ちこみたいときは、やはりベントシャフト(曲がっているやつ)のほうがいいなあと思った。今回は特にそう言う場面が多く、如実に実感。今使っているのはストレートシャフトなので、不便を感じた。ピックは、南沢では右手にセミチューブ、左手にバナナを使用。大同心では両方セミチューブにした。南沢は水っぽく、セミチューブの掛かりが良かったので、変更したのだが、大同心は硬い氷だったので逆にバナナのほうが良かったと思う。セミチューブは水氷に対しては絶対的なパワーを発揮するが、それ以外(堅氷、ミックスなど)には適さない。だったら全部バナナで対応したほうが良いのだろうか。
<どうでも良い話> (1)赤岳鉱泉から下る途中で、(テレビの)「マッターホルン登頂部」改め「赤岳登頂部」の面々とすれ違った。意識朦朧としながら無表情で歩いていた。彼等に必要なのはとりあえず体力だと思う。三度目の赤岳挑戦は成功したのだろうか。 (2)大同心大滝は待ち時間が長過ぎて、すっかり遅くなってしまった。最終バスに間に合うかギリギリのところだったが、赤岳鉱泉から飛ばしつづけて、発車1分前に滑りこみセーフ。危ないところだった。 (3)大同心大滝でARI有持氏らしき人がいた。トップロープで登っていたのだが、物凄いスピードだった。バイルもアイゼンも一発でばしっと決めて、駆け上るようであった。凄いなあと感心していたのだが、菅原さんに言わせると「あれは道具(コブラ)がいいからだ」とのこと。そうなのか、と無理やりに納得。
|
12月15日(金)
23:50 新宿発急行アルプス
12月16日(土) 曇りのち雪
3:01 茅野着
6:00 バス出発
6:45 バス美濃戸口着
7:00 美濃戸口発
7:50−8:00 美濃戸山荘
8:55 南沢大滝への分岐
9:00 小滝下部
9:00−9:40 登攀準備
9:40 小滝取付き
14:35 小滝終了
14:35−14:45 休憩
14:45 大滝へ移動
14:55 大滝取付き着
15:45 大滝終了
15:55 小滝下部(テント設営)
19:20 消灯
12月17日(日) 曇り
5:00 起床
6:50 小滝下部発
7:40−8:00 美濃戸山荘
9:15−9:45 赤岳鉱泉
10:20 下部小滝
11:00 大滝取付き
12:30 大滝登り出し(菅原さんスタート)
12:55 神谷スタート
13:55 終了点
14:00 大滝取付き
14:30 下部小滝
14:45 赤岳鉱泉
15:45 美濃戸山荘
16:36 美濃戸口
16:37 バス出発
この記録に関するお問い合わせはこちらから。
[入口] [山記録]